東京大学(東大)は7月26日、グレートバリアリーフで科学掘削を実施して、熱帯域のサンゴ化石試料を採取することに成功したと発表した。
同成果は、東京大学大気海洋研究所の横山祐典 教授らの研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature Geosciences」に掲載された。
グリーンランド氷床は世界の平均海面を7m以上、また南極氷床にいたっては70mほども上昇させる淡水を蓄えている。将来の氷床変化の予測については、気候と氷床変化の関係性のモデルを高精度化する必要があるが、そのために必要な古環境データで現在の観測値がとらえている情報は過去100年ほどと短い。
氷床は富士山ほどの高さ(厚さ)の氷が大陸全体をすっぽり覆うほど大規模なため、その膨大な質量により直下の地殻を100mも押し下げ、さらにその下のマントル物質を低緯度域に移動させるほどの固体地球の変形を引き起こす。これによって、融解した水の受け皿である海底の地形を変形させてしまうため、その容積の見積もりが困難だ。
また、近傍の海面を引き寄せるなどの変化を起こしてしまうために、氷床の変化を知るためには、できるだけそれらの影響が少ない場所、つまり遠く離れた熱帯域の情報が有効となる。加えて、地震によって地形の変形が起こっていない地域が研究に適している。
今回の研究では、これら条件を満たすオーストラリアのグレートバリアリーフにて、サンゴ礁のサンプル採取を実施。同サンプルのLGM前後のサンゴ化石試料を使った化学分析を行うことで、過去3万年間の海水準変動を復元し、世界の氷床変化を高精度に復元した。
今回の成果に関して研究グループは、人工衛星で得られる南極氷床変化の定量的な解釈を含め、現在進行中の地球温暖化が引き起こす海水面上昇の予測を行う上で重要な知見となると説明している。