NTTデータはこのほど、 同社が提供しているRPA(Robotic Process Automation)ソリューション「WinActor」のユーザー会「WinActorラウンジ」を開催した。ユーザー会では、WinActorの導入効果、開発ロードマップ、導入事例などが紹介された。
本稿では、WinActorの開発元のNTTアドバンステクノロジの代表取締役社長を務める木村丈治氏、提供元のNTTデータの取締役常務執行役員である竹内俊一氏の講演から、WinActorの導入効果、ロードマップについてお届けする。
NTTグループで定型業務にかかる時間を大幅削減
木村氏は初めに、「NTTではオペレータによってシステム間の連携を行っていたため、冗長かつ単調な操作が多く、オペレーションコストの増大を招いていた。この課題を解決するため、NTTアクセスサービスシステム研究所が端末自動化ツールとしてUMS(Unified Management Support System)を開発した。これを当社が2014年にWinActorとして販売開始した」と、WinActor開発の経緯を紹介した。
ただ2014年当時、WinActorはなかなか売れなかったが、2014年を境に、労働人口の減少が始まり、WinActorへの注目も集まり始めたという。
木村氏はNTTグループにおけるWinActorの導入例として、料金請求および設備設定に関わる業務の自動化を紹介した。RPAを導入する前は、販売担当者が注文を受け付けてシステムへのオーダー投入を行っていた。RPAを導入したことで、事前の準備やエラー対応のみを担当者が行うようになった。
その結果、システム投入にかかっていた時間が530分から40分に減少し、担当者は高度な業務にシフトすることが可能になったという。
「紙に打ち出すと、それをチェックするために人が関わることになる。ここにRPAを導入すると、人手を減らすことができるうえ、ミスも抑えることが可能になる」(木村氏)
また、木村氏はUMSの社内の導入事例として、NTT東日本と西日本は2012年にUMSを用いて新たな業務フローを構築したことを紹介した。80台のロボットを導入し、1つの受注に対し130秒かかっていたところ、10秒に減少したそうだ。今は、次にRPAによって何をやるか検討しているところだという。
複数ロボットの管理を実現する機能を提供
続いて、木村氏はWinActorの2018年度の開発ロードマップについて説明した。今年6月から最新版「Ver.5.1」の販売が開始されているが、最新版では操作性や機能向上の取り組みとして、「Chrome、Microsoft Edgeブラウザ連携のためのライブラリ追加」「フローティングライセンス方式への対応」が盛り込まれている。
フローティングライセンスとライセンス管理ソフトウェアをセットで購入することにより、ライセンス数の範囲内ならどのPCでもサーバ上のライセンス管理ソフトウェアからライセンスを取得し、WinActorを起動することが可能になる。
今後、操作性および機能の向上に向けた取り組みとしては、「ハイセキュリティ通信」「英語、中国語への対応」「プラグインAPI」「Microsoft Office 2019への対応」「画像認識精度の向上」が予定されている。「ロボットを乗っ取られて、データを盗まれないようにするための対策が必要」と木村氏。
また、RPAの導入が進むと、複数のロボットの管理が課題になるとして、WinActorでは今秋にSaaS型管理機能の提供を開始する。この機能では、「各PCのWinActor®の動作・状態の集中管理」「ダッシュボードから各WinActorへのシナリオ実行指示」「空きPCを検索してWinActorの実行割り当て」といったことが可能だ。
AI導入の失敗のパターンと成功のポイント
WinActorを提供しているNTTデータの取締役常務執行役員である竹内俊一氏は、RPAを含めたAI(人工知能)の活用について講演を行った。
竹内氏は、AIを適用すると効果がある領域として、「インタラクティブ・インタフェース(人間との対話を通してサービスを提供)「推論・思考(意思や行動の決定を自ら行う)」「コンテンツ生成(大量の情報を参考に自動でコンテンツを生成)」「知覚・制御(環境・状況を把握して自立制御)」「知識提供・発見(要知識を大量の情報から探し出す、大量データから知識を発見する)」を挙げた。NTTデータでは、AIを活用することで、RPAの自動化を高めることが可能になると考えている。
こうした領域におけるAI活用のポイントとしては「AIの得意と苦手を理解」「学習方法のノウハウを活用」「費用対効果を最大化、特に運用」の3点が紹介された。
さらに竹内氏は、AI導入の典型的な失敗パターンとして、「目的なしのAI導入検討を開始」「データがない、もしくは質が低い」「AIで実現できるが、投資対効果が見合わない」「従業員の協力を得ることができない」を挙げた。
「AIは魔法の杖ではない。データがそろってから、AIを導入すべき」(竹内氏)
竹内氏は、こうした失敗パターンを踏まえた上で、AIを成功させるポイントとして「プロセス全体を見てAI導入先を決定」「新旧織り交ぜてAI技術を適材適所で利用」「ルール化済みの業務はIT、経験則が必要な業務はAIと使い分ける」「人間とAIの違いを理解する」を挙げた。「AIは教えたことしたできない」と竹内氏。
人間と違って、24時間働くことができるRPAを使いこなせば、企業は必ず生産性を向上することができるだろう。ただし、それにはRPAの特性を理解する必要がある。従業員の効率の良い働き方を実現するためにも、RPAを適材適所で活用してはいかがだろうか。