7月18日~19日にシンガポールで開催した「HP Imagine 2018」。2日目にメディア向けの施設ツアーとして、同国のDepot Closeに位置するHPキャンパス内のSMARCを訪問したので、その模様をレポートする。

  • HPキャンパス

    HPキャンパス

SMARCは、Smart Manufacturing Application & Research Centerの略で、シンガポール経済開発庁の支援を受け、研究と試作を行う施設だ。同施設はロボティクスやデータ解析など、インダストリー4.0に関連した技術を研究・開発し、同社製品の製造プロセスの向上を図っている。

広さ6000平方フィートで、エンジニアリングチームがグローバルにおいて50以上ある製品の製造ラインを監視しており、積層造形(3Dプリンティング)やAI(人工知能)、データ分析、コラボラティブロボット(コーボット)、自律走行車(AIV)などが製造エコシステムの生産性を向上できるかを研究し、エンジニアが新しいアイデアを実証している。

同施設は、製造プロセスに3Dプリンティング技術を組み込み、効率性と柔軟性を強化する方法を研究する「BUILD」、製造プロセスを通じて生成されたビッグデータを利用し、予知メンテナンス、品質モデルの開発を行う「THINK」、コーボットや自律走行車を利用した生産性向上とフロー管理の改善方法を研究する「MOVE」、IoTによる工場のデジタル化を分析する「SENSE」の4つの研究所で構成。今回は、MOVEとBUILDを公開した。

まずはMOVE。ロボットアームにセンサを組み込んだコーボットは逆運動学(動作などから各関節の位置、角度を求める)により学習させることを可能とし、人間に協調して作業するように設計されている。これにより、モノを持つことで抵抗を感じるほか、一度学習させることで同じ行動をとることができるという。通常のロボットと比べて安全に人間と一緒に作業することができ、自動化が図れ、生産性を向上するという。

  • コーボット

    コーボット

また、2D/3Dスキャナやプロジェクタ、タッチマットなどを統合した一体型デスクトップPC「Sprout」を用いて組み立てる順番など組立作業をサポートし、間違えればアラートを出す。

  • 「Sprout」で組立作業をサポート

    「Sprout」で組立作業をサポート

AIVは工場・倉庫内における部品の配送などを想定している。人や障害物がある場合はセンサで感知し、自動的に停止し、音声で「通ります」と発するほか、充電がなくなれば自ら充電する。

  • AIVはプログラムを設定すれば自動的に動く

    AIVはプログラムを設定すれば自動的に動く

続いてはBUILD。こちらでは「HP Jet Fusion 3D」の3Dプリンティング技術により、試作品や小ロットのコンポーネントやパーツを迅速に製造できるようになり、在庫コストの削減や生産のリードタイムの短縮が可能とし、カスタマイズでエンドツーエンドでデザインからプリント、生産まで行っている。

ナイロンの粉を原材料に使用し、プリンタの稼働時には使用済みの粉を8割、新しい粉を2割ミックスし、リサイクルしている。驚くことに、同社の3Dプリンタ部品の6割は同社製の3Dプリンタで生産しているという。

  • ナイロンを積層し、部品を製造する装置

    ナイロンを積層し、部品を製造する装置

  • 積層されたものを削りだす装置

    積層されたものを削りだす装置

同社によると、さまざまな産業のワークフローは似ており、これらの技術は物流や計量・計測を行う探知、品質検査、書類での記録に活用されるという。

物流ではコーボットやAIV、ドローン、探知はセンサでリアルタイムに計測し品質検査ではオペレーターが品質管理を行うのではなく機械学習を活用し、記録では紙ベースのフローを軽減する自動作成レポートなどを挙げていた。

昨今では、マス・カスタマイゼーションが課題であり、企業にはフレキシビリティと効率性が求められている。効率の向上を図るのであれば限られた数を生産すればよいが、パーソナライズされた多くの製品を生産する必要があるという。

現状ではAIやIoT、ビッグデータ、アナリティクス、ロボティクス、3Dプリンタなど多様なテクノロジーにより、新たな可能性が生み出されようになっており、同社もこれらのテクノロジーを製品プロセスに組み込み、デジタル化を図っている。

工場のデジタル化(スマート工場)により、多様なデータを収集することでインテリジェントマニュファクチャリングの世界が実現されそうだ。