KDDI、日立製作所、NECの3社は7月24日、情報通信研究機構(NICT)と共同で、「平成30年度総務省情報通信技術の研究開発に係る提案」の公募における「革新的AIネットワーク統合基盤技術の研究開発」について提案し、採択されたと発表した。

  • 通信サービスに関わるライフサイクル管理の範囲

    通信サービスに関わるライフサイクル管理の範囲

同研究開発は、安定した通信インフラの提供に向け、サービス要件定義から回線設計、ネットワーク設定、障害監視、復旧作業など通信サービスのライフサイクルの自動化を実現することを目的としている。

将来的に5G時代を迎えるにあたり、複雑化するネットワークの設計・制御・運用に対して、機械学習・AIを用いることにより、多種多様なサービス要件を満たし、かつ安定した通信インフラ提供を可能とするネットワーク構築・運用技術を確立することを目指す。

今回、4者では課題I「AIによるネットワーク運用技術」および課題II「AIによるネットワークサービス自動最適運用制御技術」について取り組む。

AIによるネットワーク運用技術に関しては、5Gを支えるインフラ技術となるネットワーク仮想化技術およびソフトウェア制御技術の発展により、ネットワークの柔軟性が増加する一方で仮想化やソフトウェア化に基づく、運用データの肥大化により故障の検知やその故障の復旧対処、ネットワーク再設計などの複雑化が問題になるという。

この課題では、通信品質を維持する短期的な運用業務(監視・障害復旧業務など)の自動化を目的に、AIを用いた故障の未然検知および検出した故障の復旧対処を自動選択・実行させる「ネットワーク品質分析、業務抽出・実行技術」と、故障時のサービス影響の最小限に抑制するため障害の状況に応じてAIによりネットワーク資源の優先度を最適に決定する「自動資源制御アルゴリズム」の2点の研究開発を行う。

AIによるネットワークサービス自動最適運用制御技術については、ネットワークの利用を前提としたサービスの増加に伴い、ネットワークに求めるサービス要件も多様化すると予想しており、多種多様の要件に対応した通信サービスの迅速提供が課題になるという。

そこで、通信品質を維持する長期的な運用業務(サービスネットワーク設計など)の自動化を目的として、AIを利用したサービス要件仕様から動的にネットワーク要件仕様を規定する「AIネットワークリソース最適化技術」および、ネットワーク要件仕様に基づきネットワーク機能とリソース配分などの要件を満たすネットワーク最適設計を導出する「設計制御・更新の自動化技術」の2点について研究開発を行う。

  • 研究開発の全体像

    研究開発の全体像

各社の役割はKDDI、日立、NEC、NICTの4者は共同で、AI利用を考慮した、運用自動化を支援するリファレンスモデルの確立、KDDIはAIを使用する障害の要因解析・予兆検出および復旧対処により、通信品質の維持・向上を実現するための技術の確立を担う。

日立はAIを使用するサービス要件分析で人手を介さずにネットワーク要件に変換し、継続してネットワークリソースを最適化する技術の確立、NECはAIを使用する設計制御・更新の自動化により、各種ネットワーク要件の擦り合わせを行い、具体的なネットワークの構成を自動設計・更新する技術の確立、NICTはAIを使用する自動資源調停および機能移行制御でサービス品質劣化の要因となる事象を抑制するための技術の確立をそれぞれ担当する。