HPは7月18日~19日にシンガポールで「HP Imagine 2018」を開催。初日の基調講演後に日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏にインタビューの機会を得たので、その模様をお届けする。
--基調講演ではモノ(製品)の話ではなく、コンセプチュアルな話をしたのは、どうしてですか?
岡氏:分社した際は単にモノを作って売るだけの会社になってしまい、面白みがなくなるのではないかと危惧していた一方で、違う突き詰め方をするとコストパフォーマンスに比重を置くようになるが、その方向性も違うと感じていた。
ただ安いのではなく、楽しむことが重要であり、製品としての“面白さ”を付加するためデザインやセキュリティなど、そのほかの領域にフォーカスしている。このことを伝える意味があった。
--モノを売るのではなく、顧客支援のソリューションを提供するとの方針を示していますが、どのようにお考えですか?
岡氏:HP内部で議論の対象になるのは、基調講演でも話していたテクノロジーとメガトレンドの2つだ。
現在、既存製品のコア分野に加え、2~3年後のトレンドを予測した製品の成長分野、いつトレンドが来るか分からないが将来的に有望なARやVR、3Dプリンタなどの成長分野にそれぞれ投資している。
しかし、投資には筋の通ったストーリーがなければならない。単純に強みを持つ製品ポートフォリオを広げるだけでは将来への準備が不足することから、3Dプリンタなどの領域に取り組んでいる。そのため、単なるモノ売りではない方針をとっている。
--メガトレンドの把握にはクラウドの活用も必要ですが、HPEと協力していきますか?
岡氏:クラウドの活用に関しては、共同で進めていく方向性になっている。また、SIerのパートナーと適正な関係構築をしていく。パートナーは、それぞれの顧客のビジネスを把握しなければならないため、われわれ自身では限界があることから、SIerと共同で行うことは強調しておきたい。
顧客のIT投資は、昨今ではシェアリングをはじめモノを買うからことからサービスを使うという方向に流れている。そのような状況を踏まえ、顧客がどの分野にシェアリングなどフレキシビリティを持たせ、どの分野は所有するのかということは、SIerと一緒に顧客とコミュニケーションをとる中で適切なソリューションを提案していく。
例えば、製造業の顧客が既存のビジネスモデルから多品種少量のビジネスモデルに転換した際に、製造装置ではなく、3Dプリンタなど顧客のパーソナライズに合わせて提案していくことなどが考えられる。
われわれのパートナーは多くの製品を取り扱っているが、やはりモノとしてではなく、業種や業務の専用機を拡充するなど、提案するときに雛形ができていれば、顧客も理解しやすい。注力している領域は、大型デジタル印刷機や輪転機、3Dプリンタ、汎用PCのPOSへの転用、ヘルスケアなどだ。
--企業はメガトレンドの把握が不可欠だと基調講演でも話していましたが、HPではスマートフォンを市場投入していません。なにか模範となるような取り組みはありますか?
岡氏:PC分野における技術発展の余地などもあるため、専用機の分野を広げていくことを検討している。将来に備えるという意味では、キーボードは使われなくなる可能性もあるため、2D/3Dスキャナやプロジェクタ、タッチマットなどを統合した一体型デスクトップPCであるSproutなどの製品でノウハウを蓄積している。
スマートフォンを市場投入していない中で、われわれとしてはモノ自体を作らなくても企業向けのデバイス管理ツールなどインフラに近いマネージメントや、SIerのパートナーが手がける運用・保守の領域に対し、インフラとしてハードウェアとソリューションを組み合わせて提案することも可能だろう。
--HPとしてPCの将来性について、どのようにお考えですか?
岡氏:今後もPCはのびしろはあると考えている。その中で顧客が製品を選択する際に、なにをカギにするのかということに着目している。製品を選ぶと言うよりもベンダーを選ぶことが想定されるため、単なるブランドとして良さそうだという観点ではなく、技術や付帯サービスなどハードウェア売るだけではない環境をベンダーとして構築することが重要だ。