Yole Developpementは、7月26日に発行予定のGaAsウェハ市場に関する調査レポートにおいて、AppleがiPhone Xに搭載したGaAsベースのVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ))を用いた顔認証3Dセンシング機能が、LiDARへの応用同様、停滞気味だったGaAs市場に新たな息吹を与えていると述べている。

GaAsは、携帯電話機のパワーアンプのビルディングブロックとして普及し、最も成熟した化合物半導体市場の1つとなっている。同市場の中でも、もっとも大きいのはGaAs RF分野で、全体の50%以上を占めるとされる。ただし、その市場規模は、携帯電話市場が飽和気味であること、ならびに技術革新によるダイサイズの小型化が進んでいることから、この数年間、縮小気味で推移してきた。

しかし、2017年以降、AppleがGaAsベースのレーザーを使った3Dセンシング機能付きのiPhone Xを発表したことにより、GaAsのフォトニクス分野への応用に向けた道が切り開かれたとYoleは指摘している。

現在のGaAsの主な用途は、RFやLED、太陽電池に加え、フォトニクスであり、GaAsウェハ出荷量(数量ベース)は、2017年から2023年にかけて年平均15%で成長するが、フォトニクスに限れば年平均37%の高い成長が期待でき、その規模は2023年に1億5000万ドルに達するとYoleは見ている。

  • 2017年のGaAウェハおよびデバイス業界の概況

    2017年のGaAウェハおよびデバイス業界の概況 (出所:Yole Développement)

なお、GaAsウェハの供給に関しては、住友電工、独Freiberger Compound Materials、米AXTの3社で市場シェアの約95%を占めて寡占状態にある。そして、フォトニクスのような新しいアプリケーションに対する仕様要件は厳しいものであるため、Yoleではこれらトッププレーヤーが少なくとも今後3〜5年は技術的な優位性を維持すると見ている。

  • GaAsウェハの用途別出荷数量

    2017年(実績)と2023年(予測)のGaAsウェハの用途別出荷数量(単位:6インチ換算で100万枚) (出所:Yole Développement)