約40億光年離れた遠い宇宙から飛来してきた高エネルギーのニュートリノを南極の観測施設で捉え、発生源となった天体を突き止めた、と日本の千葉大学も参加する国際研究チーム「IceCube(アイスキューブ)」がこのほど発表した。チームは、ニュートリノの親粒子と言える宇宙線が放射される仕組みの解明などにつながると期待している。研究論文は7月13日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
アイスキューブは、千葉大学のほか、米国、ドイツ、スウェーデンなど12カ国49の研究機関が参加している国際共同プロジェクト。千葉大学などの発表によると、アイスキューブのチームは、昨年9月23日午前5時54分(日本時間)に南極点の観測施設で高エネルギーのニュートリノを検出した。この施設には氷表面下1.4~2.4キロに約5,000個の検出器(倍増管)が設置されている。倍増管は、氷がごくまれにニュートリノと反応すると光を発する性質を利用している。
アイスキューブのチームはこの検出結果を広島大学など世界中の観測チームに速報。報告を受けた世界各国の天文台の望遠鏡や天文衛星が、ニュートリノが飛来したオリオン座の方角を一斉に集中的に観測した。その結果、広島大学の東広島天文台・かなた望遠鏡が約40億光年離れた「ブレーザー」と呼ばれる天体から放出されたガンマ線が強まっていることをいち早く見つけた。チームはこのほか、日本など6カ国の国際共同プロジェクトとして打ち上げられた「ガンマ線天文衛星フェルミ」搭載望遠鏡(Fermi-LAT)やスペインのラ・パルマ島にある「解像型大気チェレンコフ望遠鏡」(MAGIC)の観測結果も含めて詳しく解析した。その結果、このブレーザーが高エネルギーのニュートリノ発生源であることが分かったという。
天体のブレーザーはその中心にある超巨大ブラックホールをエネルギー源として非常に明るく輝く銀河「活動銀河核」の一種。天文学の重要な研究対象天体だが、まだ多くの謎に包まれている。
ニュートリノは物質を構成する最小単位である素粒子の一つで、宇宙線が光やガスに衝突した時などにできる。ほとんどの物質をすり抜けてしまうために検出が難しい。小柴昌俊・東京大特別栄誉教授は、約16万光年離れた大マゼラン星雲で起きた超新星爆発によってできたニュートリノを1987年に初観測。その功績により2002年のノーベル物理学賞を受賞している。
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