テクトロニクス社は7月17日、最大8GHzの周波数帯域に対応する新たなミッドレンジ・オシロスコープ「6シリーズ MSO(ミクスド・シグナル・オシロスコープ)」を発表した。
同社は、2017年6月に最大2GHzの周波数帯域に対応したミッドレンジ・オシロスコープ「5シリーズ MSO」を発売しているが、同シリーズを発売して以降、より広い帯域を測定したい、という顧客からのニーズが高まっていることを受け、6シリーズを開発するに至ったという。
そんな5シリーズの良い面を引き継いだ6シリーズの特徴は大きく6つ。1つ目は、5シリーズでは、「TEK049」と呼ぶADコンバータ(ADC)ASICを搭載することで、12ビット分解能を実現していたが、6シリーズではさらに「TEK061」と呼ぶフロントエンドASIC(アンプ)を開発、搭載。これにより、1chあたり25GSpsのサンプルレートを8GHzの周波数帯域かつ4ch同時取り込みで可能としたという。
2つ目は、低ノイズと高分解能の実現。これもTEK061によって実現した技術だが、従来機種比で、1mV/divにおけるノイズを75%以上削減することに成功。これにより、デバイスの測定可能な最小の信号であるRMSノイズは競合他社の8GHz周波数帯域オシロスコープよりも低い104μVを達成したとする。
一方の高分解能はTEK049により実現しているが、6シリーズでは垂直分解能は、12.5GSpsで12ビット@4GHzと性能が引き上げられたほか、独自のDSPフィルタにより帯域を制限するハイレゾモードにより、3.125GSpsで14ビット@1GHz、625MSpsで16ビット@200MHzの分解能をそれぞれ実現できるようになったという。
3つ目が利便性の向上。具体的には、ユーザーが実際の測定現場でどのように使っているのかといった調査を元に、筐体のデザインを変更。新たに、筐体下の前脚が重量がかかっても折れない(畳まれない)構造としたほか、後脚も追加。高さを稼ぐことで、作業スペースを確保しやすくしたほか、前脚を倒し、後脚のみを出すことで、棚の上に置いた状態での測定時に、下から見やすくすることを可能にしたとする。また、外部トリガ入力(Auxトリガ)も搭載するなど、痒かったところに手が届いたデザインへと改良が施された。
さらに、GUIとして、「ビジュアル・トリガ」の機能を追加。標準形状として、長方形や三角形、台形、六角形といった形が提供されるほか、独自形状を設定することも可能。これらの形状でエリアを指定してIn、OutまたはDon't Careを設定することが可能となった。
4つ目は新たなプローブの追加。6シリーズでは8GHz帯域まで対応する必要があるということで、ハイスピードデータ向けに3種類のプローブが発売される。
その中でも最大の目玉となるのが「TDP7700シリーズ TriModeプローブ」に周波数帯域4GHz品(TDP7704型)と6GHz品「TDP7706型」が追加された点。TriModeプローブは、一度セットアップするだけで、差動、シングルエンド、コモンモードの測定を確実に実施できるため、プローブの接続ポイントをつなぎ変えることなく、差動測定、シングルエンド測定、コモン・モード測定を切り替えながら作業を進めることを可能とする。
クリップ型のTekFlexコネクタ技術を採用することで、プローブの先端を「はんだ付け用アクセサリ」、「ハンドヘルド型プローブ用ブラウザ・アクセサリ」、「同軸入力(SMA)アダプタ」と、用途に応じて付け替えることで、臨機応変に測定を行なうことができるようになっている。
5つ目がオプションを含め、豊富な測定・解析機能。その多くは5シリーズと同様だが、例えばアナログ入力、デジタル入力を自由に構成できるオシロスコープ入力技術「FlexChannel」はデジタルチャンネルであっても25GSpsのサンプリングスピードへと向上が図られている(5シリーズは6.25GSps)。また、高周波数帯域となったことで、波形の測定だけではなく解析ニーズが高まると見られるため、ジッタ解析機能も用意。基本測定と同様に測定するだけで、システムタイミングの特性評価やジッタ/アイの解析が可能となっている。
そして6つ目がアップグレードの容易性。6シリーズは周波数帯域として1/2.5/4/6/8GHzの5機種が提供されるが、機体性能としてはいずれも同じとのことで、はじめは投資規模を抑えるために1GHz帯品を導入し、後でソフトウェアライセンスを追加購入することで、より上の周波数帯域に対応を図るといったことが可能だという。
また、デジタル・ボルトメータ/およびトリガ周波数機カウンタは、製品登録をするだけで利用が可能になるほか、シリアルバスのトリガ/解析についても、各種オプションとして購入することができるようになっている。
なお、価格は310万円(税別)からとなっており、出荷は10月以降を予定している(状況によっては多少前倒しの可能性もあるという)。また、ターゲット領域として、DDR3/LPDDR3、MIPI D-PHY、LVDS、PCIe Gen1/2、車載用Ethernet、SiC/GaNなどの次世代パワー半導体などを挙げているが、そうしたインタフェースやデバイスは、組み込み分野全般で活用されるようになってきていることから、幅広いユーザーでの活用が期待できるとしており、微小かつ高速な信号の測定が必要なあらゆる製品に向けてアプローチをしかけていきたいとしていた。