多くの犠牲者と甚大な被害が出た広島県を中心と中国地方では、新しい積乱雲が連続して発生する「バックビルディング現象」が起きていた。防災科学技術研究所(防災科研、茨城県つくば市)が記録的な豪雨をもたらした雨雲データを解析して分かった。

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    画像1 防災科学技術研究所が作成した3次元データによる6日午後8時の中国、四国地方の雨雲の様子(提供・防災科学技術研究所)

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    画像2 6日午後8時の中国、四国地方の風の方向。線状降水帯の中に位置する広島県上空付近で南風と西風がぶつかり合っている。ぶつかり合ったところに上昇気流が発生して線状降水帯を長く維持したとみられている(提供・防災科学技術研究所)

防災科研は、国土交通省と気象庁のレーダー観測データを基に、豪雨当時の雨雲の様子を再現した3次元データを作成、解析した。その結果、6日午後8時に、雨雲の後方に新しい雨雲が次々と発生するバックビルディング現象が広島県付近で起きていたことを確認。この現象によって、次々と発生した積乱雲が一列に連なる「線状降水帯」(線状降水系)ができたことが分かった。

防災科研は、広島県上空で南風と西風がぶつかり合って強い上昇気流が発生し、この上昇気流が線状降水帯を長時間維持させた可能性があるとみている。解析ではこのほか、積乱雲の高さは7キロ程度で、昨年7月に九州北部豪雨をもたらした積乱雲の高さ15キロと比べて低いことなども判明した。低い積乱雲は短時間に集中的な雨を降らすことは少ないとされるが、一般的には雲の移動が遅いために一か所に大量の雨を降らせる傾向があるとされている。

バックビルディング現象は、積乱雲が風上で連続して発生して風下に激しい雨をもたらす。積乱雲が連続して発生する様子が、ビルが林立する様子に似ているためこうした名前が付けられた、とされている。この現象の発生を正確に予測することは現時点では難しいとされる。

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