仮想化環境に適したバックアップアプライアンス製品を提供するRubrik。今回、同社の日本法人であるルーブリック・ジャパン カントリーマネージャーの原田英昭氏と、同SE リードの神近孝之氏に同社製品の特徴や日本におけるビジネス展開について話を聞いた。

「プライマリストレージはイノベーションが進んでいるが、バックアップに関しては旧態依然の状態だ。イノベーションを起こすためにRubrikは設立された。バックアップにおけるハイパーコンバージドインフラストラクチャだと考えている」。

Rubrikについて、そう語るのは原田氏だ。Rubrikは、2014年に米カルフォルニア州パロアルトで創業し、日本法人は2016年12月に設立した。

  • ルーブリック・ジャパン カントリーマネージャーの原田英昭氏

    ルーブリック・ジャパン カントリーマネージャーの原田英昭氏

Pure Storage、Nutanix、VMware、Microsoft、Cloudianといった企業と提携し、連携機能を提供している。日本における販売代理店はノックス、東京エレクトロンデバイス、ネットワールドの3社。

同社製品は2Uのアプライアンス製品で、バックアップソフト、サーバ、ストレージなど必要な機能を備えたオールインワンタイプで、バックアップ対象はVM(仮想マシン)や物理サーバ、ファイルサーバ、アプリケーション、データベースとなる。

導入・運用がシンプル、低コスト、短時間

主な特徴として神近氏は「バックアップ&リカバリ」「クラウド」「自動化」の3点を挙げている。バックアップ&リカバリについては、永久増分の合成フルバックアップと重複排除/圧縮ができるほか、不足すればスケールアウトが可能なため、スモールスタート、シームレスな拡張に対応。

  • ルーブリック・ジャパン SE リードの神近孝之氏

    ルーブリック・ジャパン SE リードの神近孝之氏

アプライアンスをスケールアウトしていくとコストがかかる場合もあるが、長期保管データについてはクラウドに保管し、コストバランスを図ることを可能としている。Amazon S3やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformといったパブリッククラウドに加え、S3互換のオブジェクトストアを置いたパブリック・プライベートクラウド、IIJ GIO、NASストレージなどにアーカイブできる。

災害対策はDR(ディザスタリカバリ)サイトに分散配置し、レプリケーションを構成することで必要なデータをリストアできる。これにより、運用の工数やトータルコストの削減、DR対応、データ保全という意味でのリスク対策などを図れるという。

  • バックアップのイメージ

    バックアップのイメージ

  • バックアップ&リカバリとDR、アーカイブ統合の概要

    バックアップ&リカバリとDR、アーカイブ統合の概要

クラウドに関しては、クラウドに保管したデータはGoogleライクな検索機能で取り出すことができ、ゲートウェイも必要なく、管理はシンプルだという。クラウド環境では、同社製品で取得したオンプレミスのバックアップをポリシー設定し、クラウドに配置することを可能としている。

また、クラウド内のバックアップはクラウドベンダーが提供するデータ保護の仕組みに依存してしまうこともあるが、同社製品ではインスタンスにソフトウェアでデプロイし、クラウド内のワークロードのバックアップも可能としており、バックアップをそのほかのクラウドへの移行や、クラウドとオンプレミスの連携ができるという。

  • クラウドにおける長期保管の概要

    クラウドにおける長期保管の概要

  • クラウドネイティブアプリケーションのデータ管理の概要

    クラウドネイティブアプリケーションのデータ管理の概要

自動化については、すべての機能をRESTful APIで連携・動作させることを可能とし、Web UI機能はPoweShellやVMware vRA、ServiceNowなどのポータルに機能を呼び出し、組み込むことができ、バックアップの自動化/セルフサービス化を支援するという。

さらに、マルチテナント機能を持ち、1つの筐体の中に論理的に複数のテナントを定義し、排他した管理を標準機能で実装。テナントごとに利用実績のレポートを出せるため、チャージバックが可能となる。同機能により、MSP(Management Services Provider)が中小企業や大企業の子会社に対してバックアップサービスを提供することも可能になるという。

  • API連携の概要

    API連携の概要

  • マルチテナント機能の概要

    マルチテナント機能の概要

現状では、アプライアンス製品として提供する際にSupermicroのハードウェアを使用しているが、今後はCisco UCSサーバやHPE ProLiant DLサーバなど、サードパーティの製品サポートも予定し、ソフトウェアの販売を検討している。

神近氏は「従来はバックアップサーバやソフトウェア、ストレージなど個別でシステム構築・運用が必要であり、複雑かつ時間を要していた。われわれの製品はアプライアンスで提供しているため、導入・運用がシンプル、低コスト、短時間である。また、GUIは直感的なため操作性にも優れ、高度な専門知識は必要なく、データセンターにラッキングした後は1時間弱でバックアップを開始でき、インスタントリカバリにより、ゼロに近いRTOを実現している」と、強調した。

また、5月にはSaaSサービス「Polaris」を発表し、第1弾として「Polaris GPS」を提供している。これは、ユーザーがもつRubrikクラスタを横串で閲覧できるダッシュボード機能となり、オンプレミス、クラウド、仮想環境問わず、管理の一元化が図れ、サブスクリプションライセンスで提供。今後、ビジネスインテリジェンスの機能として機械学習を活用したものなども提供を検討している。

  • 「Polaris」の概要

    「Polaris」の概要

国内のビジネス展開

原田氏によると、米国はVM、仮想環境が多く、パブリッククラウド、プライベートクラウド含め、クラウドの利用率は高いため、市場をリードしているという。

一方、日本について同氏は「2011年の東日本大震災以降、DRの必要性が叫ばれるようになった。ここ数年は、バックアップの見直しの時期(4~5年に一度)を迎えていることに加え、クラウドが定着しているため、関心が高い。クラウドと絡めた形で、どのようにバックアップ体制を構築するかを検討している企業は多く、引き合いは拡大している」との認識を示す。

日本市場の捉え方としては、これまでAWSが多かったが、昨今ではAzureも増加してきており、選択肢が広がってきている。マルチクラウドの環境が拡大傾向にあるため、ベンダーロックインされない柔軟なサポートするほか、今後はクラウドからオンプレミスに戻す動きも想定されていることから、可搬性のあるデータ移行に対応していく。

そして、CassandraやMongoDBなどWebスケールのアプリケーションやAmazon Relational Database Service、Amazon Redshiftをはじめ、クラウドを利用する上で必要となる新しいワークロードにもいち早く対応するとしている。

従業員は昨年まで2人だったが、現在では15人に増員しており、今後も人材確保に取り組む。オンプレミスとクラウドの連携を検討している企業や官公庁などに提案を進め、業種に関係なく、販売を促進していくという。

日本市場における展望について原田氏は「これまでパブリッククラウドはAWSが強かったが、近年ではAzureも拡大し、選択肢は増えている。クラウドの使い分けることが当たり前になり、パブリッククラウドのマルチクラウド化が拡大すると考えており、柔軟性を持ちつつ、ベンダーロックインを少なくしたい。バックアップ/リストアだけではなく、バックアップはあくまでもデータをキャプチャする入口であり、われわれの製品では未利用のデータをクラウドで活用するなど付加価値をもたらすことができる」と、語っていた。