三菱重工業(MHI)は7月4日、同社のインダストリー&社会基盤(I&I)ドメイン内事業である工作機械事業についての説明会を実施。将来的には、新規事業の拡大やグローバル比率の拡大で、事業規模をこれまで以上に増大させていく方針を明らかにした。
同事業の主力である三菱重工工作機械は、2015年10月に三菱重工業から工作機械事業部を分割し、かつ三菱重工工作機械販売と統合される形で設立されたMHIの子会社。設立以来、製造・販売一体となった事業運営体制を展開してきており、2017年度の業績は457億円としている。
現在の主力製品は、自動車などで用いられる歯車を製造する歯切り盤や歯車研削盤などの歯車機械で、売り上げ全体の半数以上を占めている。また、国内と海外の比率は70:30となっており、海外比率は低い状態となっている。
そんな同社の事業戦略は「グローバルニッチトップ戦略で、『負けない会社』の実現」にあると同社代表取締役社長である岩崎啓一郎氏は語る。
具体的な方向性としては、以下の3つが掲げられている。
- 破壊的イノベーションを推進
- 常に営業利益率5%以上を目指す
- 特定分野での唯一無双を目指す(戦略製品または重点地域のシェアNo1)
2017年度は、この戦略の実現に向けた体質強化期間であったと同氏は述べており、実際には2018年度~2020年度の3か年での実現を目指している。
「2017年度は売り上げが下がっても、赤字に転落しない営業利益を維持できる会社にしようと言ってきており、あらゆるところにメスを入れて改革を進めてきた」と、売り上げ重視から、利益重視の体制へと変化を進めていることを強調。2018年度も、2017年度から継続している、マーケティングを活用した事業戦略の推進や、品質保証方式の再構築、Mass Customization/Modular Design(MC/MD)化による営業~設計~調達~製造までの業務改革の推進といった取り組みを中心に、レーザー微細加工機などの新規事業(インキュベーション製品)の事業家の促進、設備と研究開発への売り上げの5%以上の投資なども併せて進めていくことで、負けない会社の実現を目指すとする。
こうした取り組みの最終年度となる2020年度の業績目標は500億円。2021年度以降について同氏は、「先のことなので夢のような話であるが」と前置きしたうえで、「いろいろな環境の変化が考えられる。そうした中でも、アディティブマニュファクチャリングなどのデジタルイノベーションによる3Dプリンタやレーザー加工機といった新規事業の拡大などを進めることで業績の拡大を目指す。また、自動車の電動化の進展によるフルEV化が進めば、エンジンがなくなり歯車の需要が減る可能性もあるが、ロボット向け小型歯車の需要などは逆に伸びることが見込まれる」と、事業の拡大の方向性を提示。また、それを支えるのが、グローバル化の推進であり、「既存事業に対しても新製品を出して、地力を付けていくことで、海外での認知度向上を図っていく。特に中国、米国、そしてインドの市場は伸びると見ており、これらの国を中心に売り上げを伸ばしていくことで、国内外の売り上げ比率を逆転されるだけの成長を果たしたい」とし、2030年には売り上げ1000億円規模の達成を夢として掲げてみせた。
なお、同社は現在、世界一の産業用3Dプリンタを作り上げようと2016年4月から技術開発活動を進める「技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)」に参加する形でレーザーデポジション(DED)方式の金属3Dプリンタの開発を進めており、2019年度から正式に発売を開始する計画としているほか、先行して一般販売に向けた試作機の製造も進めており、今秋にはそれが完成する見通しだとのことで、実機を12月5日~7日にかけて幕張メッセにて開催されるレーザー加工、光学部品、光計測など「光技術」の総合展「Photonix 2018 -第18回 光・レーザー技術展-」にて展示を行なう予定だとしている。