チョコレートの種類として知られている「ダーク」、「ミルク」、「ホワイト」に次ぐ”第4のチョコレート”として注目を集めたルビーチョコレートが、開発元のチョコレートメーカー・バリーカレボーより、日本市場で本格展開される(7月19日より予約開始、10月発売予定)。
年始には、バレンタイン商戦に合わせ、同社とネスレが「キットカット」の特別フレーバーとして市販したルビーチョコレートだが、このたび業務用製品「RB1(アールビーワン)」を日本で発売することにより、それ以外のメーカーや全国のショコラティエ・パティシエの手にわたっていく。本稿では、同製品の予約開始に先駆けてバリーカレボージャパンが開催した、新商品発表会の模様をお届けする。
カカオ単体で「ピンク色」を実現
ルビーチョコレートの特徴は、これまでベリーや着色料などをホワイトチョコレートに混ぜて表現していた「ピンク色」を、カカオ単体で実現可能にした点にある。
ゲストの有名パティシエ・辻口博啓氏が「ルビーチョコレートを最初に見たときは、何か混ぜて(ピンク色にして)いるのだと思った」という程の鮮やかさをもつが、材料自体はカカオ豆のみで、一般的な品種だという。数多くのカカオ豆の中からルビーチョコレート製造に適応する物をピックアップして製造しており、その選別技術は同社が約13年かけて確立したと語られた。また、そうして集めた材料の色と食味を引き出す製造技術も併せて開発された。
先行予約および発売は、同社の商社・卸店である前田商店などのほか、ECサイトモール「楽天市場」でも受け付ける。
「特別な時間」の演出を狙う
日本市場で現在、チョコレートという商材はどのような状況にあるだろうか。既知の通り人口減少が進む近年の日本市場において、チョコレート市場は成長傾向にあると語ったのは、バリーカレボージャパン 代表取締役社長 中野文孝氏。過去8年間に約18%マーケットが拡大。プレミアム感を持つ商品、あるいは健康志向の商品が購買を牽引しており、今後の市場規模試算では2030年に32万トン(2017年の1.22倍)の消費を見込む。
このような市況に投入されるルビーチョコレートの製菓材料「RB1」は小さなコイン型の「カレット」で提供され、他のベーシックなチョコレート材料と同等の1.5kgという内容量で提供される。価格はオープンということだが、バリーカレボージャパンの担当者によれば、およそ「既存製品の1.3~1.4倍」と、既存製品よりも製造に手間がかかるためか、やや割高になる。ただし、今後需要と供給のバランスが安定することにより、値段が下がることも考え得るともコメントした。
同社 グルメブランドマネージャーの原紅希子氏は、ルビーチョコレートの利用シーンについて「大切な人と、大切な時間に食べる」というテーマを提示。「健康を意識する一方、美味しい物も食べたい」というバランス感覚を持つ若い世代の感性にマッチすると予想し、利用シーンとしてはバレンタインを筆頭に、ウエディングパーティーや記念日、アフタヌーンティーなどを挙げたほか、塩気のあるチーズなどとの相性が良いためアペリティフとして、あるいはコーヒーとの相性を生かした用い方もできるのでは、と提案した。
ルビーチョコレートの強みは「ストーリー」
ゲスト登壇した2名の有名パティシエは、この新しい製菓材料について、プロの視点からコメントを寄せた。「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ・小山進氏は、辻口氏と同様、鮮やかなピンク色が天然の発色であることに驚き、すぐにサンプル請求をしたという。同氏はチーズケーキやバークムーヘンに加える使い方や、(今回の製品では含まれている)乳成分が入らない純粋なルビーチョコレートの味わいに興味を示していた。
辻口氏はこの新たなカテゴリのチョコレートについて、「モノがしっかりと売れて行く背景にはストーリーがあるが、ルビーチョコレートはピンク色がカカオだけの色合いであるということ、食材との組み合わせなど、多くのストーリーを持っている」と評価。「発色が可愛らしいため、バレンタイン商戦でも有効に使えるだろう」とも付け加えた。
会場では「RB1」のカレット、および辻口シェフと小山シェフが開発したショコラが振る舞われた。ルビーチョコレート単体の味わいはまろやかでかすかにベリーのような酸味があり、後味がとてもすっきりとしている。色合いのみならず味わいもロゼシャンパーニュとの相性が良好ということで、試食したところ、ルビーチョコレートの爽やかな甘みがシャンパーニュのフルーティーな飲み口を引き立て、材料としての希少性も含めて特別な場の演出に適したペアリングと感じられた。
今後の予定としては、7月19日に予約を開始した後、8月に講習会を開催(大阪:8月7日、東京:8月10日)、9月に発売記念イベントを行い、そして10月に発売を開始する予定で、レストランやパティスリーなどに展開されるのはこれ以降となる。
駄菓子から高級ショコラまで幅広く展開され、わたしたちの身近にある「チョコレート」の中に現れた新たな「色」と「味」。その希少性から特別感のあるシーンでの消費が見込まれそうだが、日本のパティシエたちはこのルビーチョコレートをどう料理していくのだろうか。発売後に展開されるだろう、ルビー色のスイーツの多様性に期待したい。