東京工科大学は6月28日、高濃度のビタミンC(VC)ががん転移を抑制するメカニズムについての新たな研究成果を発表した。
同成果は、同大 応用生物学部の佐藤拓己 教授ならびに小島直也氏(同大 応用生物学部4年生)、井口拓也氏(同大 応用生物学部4年生)、河合紘希氏(同大 応用生物学部4年生)、小林凌太氏(同大 応用生物学部4年生)、蓮池大樹氏(同大 応用生物学部4年生)、濱田健三氏(同大 応用生物学部4年生)らで構成される研究チームによるもの。詳細は米国の薬理学専門誌「Reactive Oxygen Species(ROS)」に掲載された。
高濃度のVCを血液に直接投入すると、がん治療に効果があることが近年の研究から分かってきた。中でも、従来からの治療法の補助として用いられることが期待される「高濃度ビタミンC点滴」は、がん転移を抑制できる可能性が示唆されているが、そのメカニズムについてはまだよく分かっていなかったという。
そこで研究チームは今回、その作用機序の解明に向けた研究を実施。その結果、ビタミンCには基質に接着していない転移能のあるがん細胞に対して選択毒性を発揮し、抑制する作用があること、ならびに酸化型ビタミンC(DVC)の場合、そうした作用はないものの、細胞を保護する作用があることを確認したとしており、この結果、ビタミンCががん転移の段階のおける転移がん細胞に有効であることが示されたと研究チームでは説明している。
なお、研究チームでは、高濃度ビタミンCをもちいた治療は、ステージの進行したがんにも効果がある可能性が示唆されていたが、そのメカニズムの1つが今回の成果で説明できるようになるとコメントしているほか、酸化型ビタミンCの細胞死を抑制する作用について、神経細胞の変性を主徴とする脳虚血の治療などに応用できる可能性が示されたとしている。