アドビ システムズ(以下アドビ)は、同社の公式ブログ「Adobe Creative Station」において、写真に加えられた編集箇所をAIと機械学習で検出する技術に関する内容を紹介する「人工知能でフェイク画像を見破る」を公開した。
同ブログでは、28年前に登場したPhotoshopにより、いまや画像編集は芸術的表現の拡張のみならず、家族の記憶を守り失踪児童の捜索にまでも役立っている。一方で、同ツールを「(写真に)毒を盛って人を欺く」ことに悪用されることもあるなど、人の意図によって善にも悪にも使うことができると紹介。
記事によると、アドビのヴラッド モラリウ氏は、長年コンピューター画像解析の関連テクノロジーに携わった能力を活かし、2016年よりアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)にあるメディア科学捜査プログラムの一環として、画像改ざん検出の研究を開始したという。
同氏は、写真に加えられたデジタル修正の痕跡を記録追跡するツールはすでに多く存在するとし、「ファイル規格には、画像がどのように保存され、どんな操作が加えられたかを示す情報格納用のメタデータ領域があります。ノイズ分布、強いエッジ、ライティングといった画像ピクセル情報を分析して修正を検出する調査ツールもあります。画像が修正されていないことを証明するために電子透かしを用いることもできます」と述べている。
しかし、これらのツールは、あらゆる状況にも実用的に対応できるものではなく、使い方に熟練と長い作業時間を要することから、同氏は、AIと機械学習のような新しいテクノロジーを使えば、デジタル画像改ざんをより簡単に、信頼性高く、すばやく検出すると同時に、どの部分が改ざんされているのかを示すことができるのではないかと考えたとのことだ。
そして、異なる画像を組み合わせた「接合」、写真中のオブジェクトを複製して移動配置する「複製移動」、写真からオブジェクトを消して背景で埋める「除去」という3つの改ざんテクニックに着目した。同氏は「それぞれの画像編集テクニックには、高コントラストなエッジ、人為的に均一化された領域、異なるノイズパターンなど、固有の痕跡を残します」と述べ、人の目では判別できない痕跡でも、ピクセルレベルの詳細解析を行ったり、それらを強調するフィルターを適用することで容易に検出可能となった。
これらのテクニックをAIで処理することで、これまで科学捜査のエキスパートが何時間もかけて行っていた解析がわずか数秒で実行可能となり、画像改ざんの箇所を特定できるようになった。AIは修正操作の種類を特定し、写真上でそれが適用された領域をハイライトするという。
何千何万もの改ざん前後の画像を活用し、深層学習のためのニューラルネットワークをトレーニングした。それは、「RGBストリームを使った改ざん検出方法」と「ノイズストリームフィルターを使った検出」だ。画像のノイズは、デジタルカメラのセンサーまたは写真編集に使ったソフトウェアの副作用として生じる、色彩と明度に含まれるランダムな値のばらつきで、「砂の嵐」のように見える。写真もカメラも固有のノイズパターンを示すため、真正領域と改ざん領域の間でノイズ特性の不一致を検出できる。これはふたつ以上の写真を合成した場合に顕著だということだ。
これらのテクニックはまだ完全なものではなく、写真の「絶対的真正性」を保証するものでもないが、デジタル改ざんの社会的インパクトに向き合うための新しい方法と選択肢を示しているとしている。そして、真正性についての問いにより効果的な答えをもたらす可能性も秘めていると説明している。ヴラッド氏は、デジタルファイルを繰り返し保存し直す際に、写真全体に生じる輝度の変化や圧縮ノイズなど、他の種類の痕跡も検出できるようにアルゴリズムを拡張していきたいと考えているのことだ。