ハンガリーの首都ブダペストの中心部で6月24日(現地時間)に開催されたレッドブルエアレース第4戦本戦で、室屋義秀選手は1回戦のラウンド・オブ14で敗退。前回の千葉大会に続いて年間ポイントは0ポイントに終わった。これによりランキングは3位から5位に後退し、年間チャンピオン争いで厳しい状況に追い込まれた。
予選の滑り出しは上々、首位グーリアン選手と直接対決へ
前回の千葉大会ではラウンド・オブ14で敗退し、年間ランキングでは3位のままだったが上位2名との差を広げられてしまった室屋選手。ブダペスト戦の予選では、最速タイムを出したマルティン・ソンカ選手(チェコ)と0.032秒差の57.632秒で2位という幸先の良いスタートを切った。一方、年間ランキングで同点1位の2名のうち、マイケル・グーリアン選手(アメリカ)は荷重(G)が制限を超えるペナルティを受けて13位と奮わず、ラウンド・オブ14では室屋選手とグーリアン選手が対決する組み合わせになった。
レッドブルエアレースは優勝が15ポイント、11位以下は0ポイントなので、初戦での直接対決は一気に差を縮める絶好のチャンスだ。もちろん負ければ逆の結果になる。グーリアン選手と17ポイント差をつけられている室屋選手にとって、この組み合わせはいわば「ハイリスク・ハイリターン」の大きな賭けだ。
荒れ模様の本戦、悪夢のオーバーGで敗退
本戦1回戦のラウンド・オブ14は5組目までの対戦のうち3組で、オーバーGのペナルティを受けた選手が敗退。長細く直線的で速度が出やすい、ブダペストのレースコースならではの荒れ模様となった。
そして6組目、先攻のグーリアン選手は57.504秒と、この時点で2番目に早いタイムを出してノーペナルティでゴール。これは後攻の室屋選手の予選タイムより0.1秒ほど速いが、室屋選手も予選をやや上回るペースでレースを開始した。しかし、1回目の垂直ターンでまさかのオーバーG。その場で失格により敗退が決定してしまった。
前回千葉大会で、やはりラウンド・オブ14でランキング上位のマット・ホール選手(オーストラリア)と対決し、その好タイムを上回ろうとしてオーバーGとなって敗退した室屋選手にとって、この結果はまさに千葉の再現。実況中継ナレーターは「ナイトメア(悪夢)だ」と悲嘆し、室屋選手は悔しさのあまりコックピット内で唇を噛みしめ、短く叫び声を上げた。
地元東欧のソンカ選手、チャンピオン争いへ復活
決勝戦のファイナル4に勝ち進んだのは、年間ランキング同点1位のホール選手とグーリアン選手、室屋選手と同点3位のソンカ選手、そして6位のミカ・ブラジョー選手(フランス)。東欧チェコ出身のソンカ選手にとってブダペストはいわば「準ホーム」の地元とも言え、会場には多くのファンが詰めかけていた。そんな中、ソンカ選手は予選トップ以来の安定したフライトを見せて見事優勝。2位は、2017年にマスタークラス昇格して以来初の表彰台となったブラジョー選手。3位はホール選手、4位はグーリアン選手の順となった。
ソンカ選手は今年、初戦のアブダビと第2戦のカンヌで、良いタイムを出しながらエンジントラブル(規定回転数をオーバーし失格)で順位を落とすという不運に見舞われていた。第3戦千葉での3位入賞に続いて今季初の優勝にこぎつけたが、そもそもエンジントラブルがなければ4大会すべてで決勝進出していたはず。昨年は最終戦まで室屋選手と年間チャンピオンを争っていたソンカ選手が、地元ブダペストでついにチャンピオン争いに帰ってきた格好だ。
背水の陣の室屋選手、逆転なるか
これにより年間ランキングは、1位は引き続きホール選手。グーリアン選手は同点1位から2ポイント差の2位となり、ソンカ選手の順位は3位と変わらないが11ポイント差に詰めた。ブラジョー選手は過去最高順位の4位に上がり、室屋選手は5位へと後退。室屋選手とトップとの差は26ポイント、同点だったソンカ選手とも15ポイント差と大きく離されてしまった。
大会後、室屋選手は「ウィンドシア(急な風の変化)を感じて、12Gを超えないようなリアクションをしたんですけど、間に合いませんでした」と説明した。2大会連続の失格にはさすがに苦悩がにじむ。今シーズンに入って数多く行ってきた機体改良の影響など、幅広く見直しをしていることだろう。
4戦中2戦で0ポイントの敗北を喫し、背水の陣とも言える室屋選手だが、昨年も0ポイントの大会は2回あった。また予選などのタイムは千葉やブダペストでもトップレベルで、安定度を取り戻すことができれば残り4戦での大逆転も不可能ではない。次のカザン戦(ロシア)は8月25日、26日だ。