スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とスイス・エレクトロニクス&マイクロテクノロジーセンター(CSEM)の研究チームは、シリコンとペロブスカイトを積層したタンデム型太陽電池で記録更新となる変換効率25.2% を達成したと発表した。

また製造方法が単純であり、既存の太陽電池の量産ラインに組み込むことも可能であるという。変換効率については、最終的に30% 超まで高めることができると考えられている。研究論文は「Nature Materials」に掲載された。

  • シリコン-ペロブスカイト積層型太陽電池

    シリコン-ペロブスカイト積層型太陽電池の表面。シリコンのピラミッド構造がペロブスカイト層で完全に覆われている (出所:EPFL)

ペロブスカイト太陽電池の研究開発は近年活発に進められており、その変換効率は9年前と比べて6倍にまで上がっている。また、塗布印刷技術が使えるため、製造コストを抑えることもできると期待されている。

シリコン-ペロブスカイトのタンデム型太陽電池では、シリコンが主に赤色光と赤外光を電気エネルギーに変換し、ペロブスカイトは緑色光と青色光を変換するというようにお互いに波長を補完し合うことで、広い波長域を利用できるようにしている。

今回の研究では、通常のシリコン太陽電池セルの上にペロブスカイト系のセルを形成して、変換効率25.2% を実現した。実用化されている単結晶シリコン太陽電池の量産ラインに数ステップの工程を追加するだけでペロブスカイト層を形成できるという特徴があるという。

シリコン層には、光の反射を抑えるための微小なピラミッド構造のテクスチャーが施されている。これまで、こうしたテクスチャー処理されたシリコン層の表面に液状のペロブスカイトを堆積させようとすると、ピラミッド同士の谷間の部分に液がたまってしまい、ピラミッド頂点が露出した状態になって、これが短絡の原因になるという問題があった。

この問題を解消するため、従来はピラミッド構造の高さを低くして露出を避けるという方法が取られていたが、ピラミッドが低いとシリコン層の光学特性に影響して変換効率が抑えられてしまうという別の問題が起こる。

そこで今回はまず、ピラミッド構造を完全に覆うような無機系のベース層を蒸着法によって形成した。この無機ベース層は多孔性になっているため、液体状のペロブスカイトをスピン塗布法を使って添加すると、無機ベース層の多孔質の内部に液が保持される。

次に、液状のペロブスカイトを保持した状態で、基板を150℃という比較的低温条件で加熱する。この処理によって、均一な膜質で結晶化したペロブスカイト層をシリコン層の表面に形成することができるという。