新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は25日、NEDO事業において、日本大学工学部が、日商テクノおよび住環境設計室とともに、一般住宅向けの浅層地中熱利用システムの低コスト化技術を開発したことを発表した。
低コスト化を図るため、システムの地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく新たな施工法と、地中熱交換器群と冷暖房用室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術を開発し、最終目標である導入コスト40%減と運用コスト10%減の大幅なコスト削減を達成できる見込みを確認。今後、実証試験を引き続き実施し、システム構成機器と制御系の最適化によりさらなるシステムの効率化を図るとともに、商用化を見据えた信頼性検証を行う予定だ。
住宅基礎杭などを活用できる浅層地中熱利用は、熱エネルギーの有力候補とされてきた。地中熱利用システムは、地中に埋設させた熱交換器を通じて地中の熱を取り出し、ヒートポンプで冷熱・温熱を作り出して室内機で冷房・暖房をする。冬は外気より高い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く暖房でき、夏は外気より低い温度の地中熱を熱源に利用できるため効率良く冷房できる。
しかし、従来システムでは、熱交換器の埋設孔を深く掘る必要があるため掘削コストが大きくなるほか、地中熱交換器とヒートポンプ、ヒートポンプと室内機の制御が最適化されていないなど、多大なコストがかかることが課題となっていた。
このたび日本大学工学部は、NEDO事業において、日商テクノおよび住環境設計室とともに、浅層熱利用システムの導入コスト低減に寄与する技術として、地中熱交換器で使用する鋼管を回転させながら地中に貫入させていく回転埋設工法を開発した。
この施工法は、埋設機能および熱交換機能を保有する2重管方式熱交換器を利用するため、排出残土もなく、埋設作業と熱交換器設置作業を同時に実施する低コスト型の手法である。これを実現するため、深さ20m以浅の地中熱利用であることを活かし、幅、奥行き1m程度の小型軽量埋設機構を開発するとともに、短い鋼管を順次接続しながら地中に回転埋設していくためのねじ式接続法と周囲土壌を圧密しながら貫入していく2重管方式地中熱交換器と、鋼管の先端錐(ビット)の設計法により、同施工法を開発した。
また、運用コスト低減に寄与する技術として、複数の地中熱交換器群と冷暖房室内機群を連携制御するヒートポンプシステム制御技術を開発した。この制御技術により、複数の室内機群の運用に影響される熱負荷に応じた循環ポンプの流量の適正化、および地中熱交換器の稼働率の適正化に成功した。
開発技術の検証にあたっては、福島県郡山市の日本大学工学部再生可能エネルギー共同研究施設および福島県葛尾村の実験場において実証設備を構築し、開発技術と従来技術とを同一の環境条件で比較評価するとともに、既築の戸建住宅へ新たにシステムを導入する場合の初期コストについて、各種設備の実際の調達を念頭に実証的な評価を進めた。その結果、初期導入コスト評価では、浅層熱利用の実証システム導入の既築住宅を対象とした場合、新施工法により導入コストを40%削減した150万円/5kWの浅層地中熱利用システムを実現できるとの見通しが得られ、従来の浅層地中熱利用システムとの比較でもシステムの運用コストを10%低減できることも確認された。
今後は、同システムの配管系の施工法改良などで引き続きシステムコスト低減を図っていくという。また、同システムの検証試験を引き続き実施し、システム構成機器および制御方法の最適化によってさらなるシステム効率向上を図るとともに、商用化を見据えた信頼性検証を行っていく予定だとしている。