東京都市大学は、同大の研究グループが、植物の主成分であるセルロースとガラスから、新しい有機・無機ハイブリッド材料を生成することに成功したことを発表した。

この成果は、東京都市大学工学部エネルギー化学科の岩村武准教授らによるもので、6月29日に開催される「第13回相模ケイ素・材料フォーラム」にて発表される。

  • 新材料で代用が期待される部材の例(左:自動車、中央・右:包装材料)(出所: ニュースリリース※PDF)

    新材料で代用が期待される部材の例(左:自動車、中央・右:包装材料)(出所: 東京都市大学ニュースリリース※PDF)

植物の主成分で地球上に豊富に存在している天然高分子である「セルロース」は、非可食性のバイオマス資源として期待されている。その構造は、糖の一種であるグルコースが直鎖上に連結した化合物で、分子間、分子内での水素結合のような分子間相互作用が数多く存在することから、強固な結晶構造をとることが知られている。そのため、多くの溶媒に対して難溶で、新材料を開発する際の原料物質としては非常に扱いづらかった。近年では、セルロースを使ったセルロースナノファイバーが注目されているが、一般的な有機溶媒に溶けないことやコストが高いといった課題がある。

研究グループは、軽くて加工性に優れ、柔軟性のある有機高分子と、耐久性、耐熱性に優 れる無機物を分子レベルで合わせる「有機・無機ハイブリッド化技術」の活用に取り組み、有機・無機の両特長を併せ持つ材料や、複合することで初めて生じる性質を持つ材料の生成を行ってきた。

この研究では、アセチルセルロースとアルコキシシランを原料として、セルロース-ガラスのハイブリッド材料を生成した。溶剤にアセチルセルロースとアルコキシシランを溶解し、触媒として塩酸水溶液を加え、室温下で1時間撹拌することにより反応させた。その後、反応溶液をトレーに移し、60°Cに加温した乾燥機の中で反応を継続させながら乾燥させ、透明で均一なフィルムができた。同製法は、触媒として加えた塩酸の作用でアセチルセルロースはセルロースに、アル コキシシランはガラスに変換する反応を同時に進行させている。

この方法により得られた透明なフィルムを電子顕微鏡で観察したところ、セルロースとガラスが混ざり合っていることが分かり、さらに、示差走査熱量測定およびX線回折分析を行ったところ、それらは分子 レベルで合わさっていることが明らかになった。また、透過率測定を行ったところ、380-1100nm の範囲で93%と、非常に高い透過率を有していた。

  • 透過率のデータ(Aが本研究で得られたハイブリッド材料、Bがアセチルセルロース)(出所: 東京都市大学ニュースリリース※PDF)

自動車では、車両重量を1/2にすれば燃費は約2倍に向上しCO2排出量を約1/2に低減できるため、車重を軽くするということは温室効果ガスの排出を低減させるという観点からも非常に重要である。

同研究で得られた新材料を、乗用車のガラス部材のみならず、乗用車の約22%を占めるボディ材料にも利用できれば、車両重量の25%程軽量化が見込まれる。また、包装材料などへの利用も想定され、材料生成時のコストや時間、および環境負荷の低減が期待できるとしている。