Hewlett Packard Enterpriseは6月21日(米国時間)、米ラスベガスで開催中の「HPE Discover Las Vegas 2018」において、コンバージドエッジシステム「HPE Edgeline」の強化を発表した。最近、エッジコンピューティングに注力するベンダーが増えているが、同社の製品の強みはどこにあるのだろうか。

HPEはエッジコンピューティング関連の製品として、「HPE Edgeline GL 10」などのゲートウェイ、それにコンバージドエッジシステムとして「HPE Edgeline EL」を持つ。後者はコンピューティング、制御システム、データ取得、iLOシステム管理機能が単一のエンクロージャーに統合され、IoTエッジ環境向けに強化されたシステムで、2年前に投入された。

同日に開催された発表会で、IoTとコンバージドエッジシステム担当ゼネラルマネージャーを務めるHPEのバイスプレジデントであるTom Bradicich氏は、「コンバージドエッジシステムとしてEdgelineファミリを構築した時、『オペレーション技術を統合する』『エンタープライズ級のデータセンター関連技術をエッジにもたらす』という2つの約束があった」と述べる。

  • コンバージドエッジシステムEdgeline分野を率いるHPEのTom Bradicich氏

「オペレーション技術の統合」については、National Instrumentsとの統合などを通じて、制御システムやデータの収集に必要な技術を提供している。今回の発表は「エンタープライズ級のデータセンター関連技術をエッジにもたらす」の実現に該当する。具体的には、「HPE Edgeline EL 1000」「HPE Edgeline EL 4000」で「SAP HANA」「Microsoft SQL」「Citrix XenApp」および「XenDesktop」、GE Digitalの「Predix」、SparkCognitionの「SparkPredict」などのエンタープライズアプリケーションの認定を取得した。

  • 左から、「HPE Edgeline EL 1000」「HPE Edgeline EL 4000」

  • HPE Edgeline EL 4000、HPE Edgeline EL 1000でSAP HANA、Microsoft SQL Serverなどを動かすことができるようになる

Edgeline EL 4000は、HPE ProLiant m510あるいはHPE ProLiant m710xのコンピュートノードを組み合わせて構成できるなど高機能なIoTサーバで、「サーバ級の処理能力で、サーバ級のエンタープライズアプリケーションを動かすことができる」とBradicich氏。「(Edgeline EL 4000の上で動かす業務アプリケーションはカスタマイズしたバージョンでも、機能を減らした"ミニ"バージョンでもない。妥協はない」という。

クラウドにデータを送ることなくデータを収集するエッジ部分で処理するエッジコンピューティングは、遅延解消、セキュリティ強化、効率向上など、さまざまなメリットをもたらす。完全な業務ソフトウェアが動くことでこれらのメリットをさらに強化できる。

製造現場、自動運転など、IoTを活用する例はさまざまだが、石油のMurphy OilはEdgelineを導入することによって、地下資源の坑内採掘のモニタリングなどを実現しているという。Bradicich氏に招かれてステージに登場したMurphy Oilのデジタルトランスフォーメーション担当ディレクターのMike Orr氏は、「エッジで予測分析など処理能力を必要とするアプリケーションを完全版で動かすことができることは、われわれのビジネスに重要なインパクトを持つ」と語る。

  • 左から、HPEのTom Bradicich氏、Murphy Oilのデジタルトランスフォーメーション担当ディレクターを務めるMike Orr氏

Bradicich氏は、「ソフトウェアが動く場所として、データセンター、クラウドがあるが、エッジが3番目の場所として加わることになる」と述べる。データセンター、クラウド、エッジの3カ所でまったく同じソフトウェアが動くことで、「予測などのアプリケーションを動かすことができるだけでなく、データセンターやクラウドと同じように、好みのツールを使ってエッジも管理できる」とBradicich氏。

これは、HPEが打ち出す「エッジからクラウドまで」にとって重要なことだ。クラウド、そしてIoTと、IT分野のトレンドに合わせた動きでもある。HPEはHPE Discoverの会期中、インテリジェントエッジに4年で40億ドルを投資することを発表している。

HPEはまた、HPE Edgelineコンバージドエッジシステム向けのオプションキットとして「HPE Edgeline Extended Storage Adapter」も発表した。最大で48TBのソフトウェア定義ストレージをサポート可能という。監視カメラなどの動画分析など、ストレージが重要になる用途へのニーズに応えるものとなる。同オプションキットは、米国では9月より提供を開始する。

  • ストレージ拡張オプションキット「HPE Edgeline Extended Storage Adapter」も発表した