モノを作る会社は、どの分野の研究開発(R&D)に投資をしているかを知ることで、その会社の方向性が見えてくる。今回、ヴイエムウェアが同社のR&Dに関する説明会を開催した。サーバ仮想化製品からビジネスをスタートした同社だが、今ではストレージ、ネットワークとカバーするテクノロジーの幅を広げている。

VMware Global Field & Industry担当 副社長 兼 最高技術責任者(CTO)のクリス・ウルフ氏は、同社のR&Dにおいて「Cloud -to Edge」を原則としており、「開発者の自由度」「ネイティブ環境」「オープンソース・プロジェクト」「スピードと拡張性」「運用の一貫性と制御」「シンプルなライフサイクル管理」「実用主義」を重視していると説明した。

  • VMware Global Field & Industry担当 副社長 兼 最高技術責任者(CTO)のクリス・ウルフ氏

  • R&Dにおいて「Cloud -to Edge」を原則としている

ウルフ氏は同社のR&Dに関する取り組みとして、R&Dエンジニア向けの社内イベント「RADIO」を紹介した。同イベントは年に1度開催されるが、今年は選ばれた1700名が参加し、1210の新しいアイデアが出されたという。「提案は誰もが行え、われわれのイノベーションをドライブする手段となっている」と同氏。

同社がR&Dにおいて対象としているテクノロジーとしては、機械学習、IoT、AR(拡張現実)、エッジコンピューティング、ハードウェアアクセラレーション、量子コンピューティング、適応型セキュリティ、サーバレス、データ分析、ブロックチェーン、デジタルツインが紹介された。

  • VMwareがR&Dにおいて注力しているテクノロジー

これらのテクノロジーの中から、ウルフ氏はエッジコンピューティングについて詳しく説明した。同社は今年5月に、新たなネットワークのビジョンとして「Virtual Cloud Network」を発表、それを実現するため、ネットワーク仮想化製品「VMware NSX」に新機能を追加しており、ネットワーク分野に注力している。

エッジにおけるVMwareの優位性とは?

ウルフ氏は、エッジは「デジタル環境と物理環境が出会う場所」と定義した上で、エッジのユースケースとして、「IoT」「データ分析」「機械学習」「人工知能」「AR」を挙げた。

「IoTであれば、熱センサーで電車のブレーキの温度を監視することで、故障を予測して、適切な時期にメンテナンスすることが可能になる。電車のメンテナンスは早すぎても遅すぎてもコストがかかるので、適切な時期に行うことで、コストの適正化を図ることができる。セキュリティについては、新たな脅威が登場しており、既存の製品では対処できなくなってきている。アプリケーションを理解して対処するという新たなアプローチが求められているが、われわれは仮想化によって実現しようとしている」(ウルフ氏)

これらのユースケースはいずれも、企業注目しているテクノロジーであるとともに、同社のR&Dがカバーするテクノロジーでもある。エッジコンピューティングはこれらのベースになるテクノロジーと言える。

ウルフ氏は、エッジコンピューティングにおいて、同社がフォーカスしているテーマとして「エッジのセキュリティ、管理、監視」「HCIを活用したクラウドからエッジへのインフラの展開」「エッジとモノの仮想化」を挙げた。

これらを実現する手段の1つが、同社が提供するインフラ・アーキテクチャ「VMware SDDC(Software-Defined Data Center)」だ。SDDCは、 vSphere、vSAN、NSXによってコンピューティングから、ネットワーク/ストレージまで仮想化されたインフラで、クラウドからエッジまで運用管理の一貫性、柔軟性、一元管理を可能にする。ウルフ氏は「SDDCは、過去にできなかったイノベーションを可能にし、ユーザーが好きな技術が使える環境を提供する」と語った。

また、同社はマルチクラウドを実現するアーキテクチャ「VMware Cloud」を提唱している。VMware Cloudは、クラウド・仮想マシン・コンテナによるインフラ、運用管理のためのSaaS群「VMware Cloud Services」などから構成され、一貫性のある開発者環境・運用・インフラを提供する。VMware Cloudはエッジコンピューティングでも利用可能だ。

こうしたインフラを提供することにより、同社はIT部門と開発者に対し、さまざまなメリットを提供する。IT部門から見た場合、「IoTゲートウェイとデバイスの管理、監視、セキュリティ」「グローバルにわたる一貫性」「シンプルさ」「柔軟な選択肢」が魅力となる。また、開発者から見た場合、「ネイティブなオープンソースコンテナ、PaaS、IaaS、FaaS」「エッジでのクラウドサービス」「ハイブリッドアプリケーション」「一貫したツールとテレメトリ」「モデリング」がメリットとなる。