5Gで広がるIoT市場
移動通信の標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)は2018年6月14日(米国時間)、Release15(R15) スタンドアロン(SA) 5G NR(フェーズ1)の仕様策定を完了したことを公表した。これにより、2017年12月に先行して策定が完了していたノンスタンドアロン 5G NR仕様と併せて、5Gの主要機能の全仕様が規定され、5Gの本格活用のための土台が整った。
この動きは、単にスマートフォンの通信の高速化だけではなく、IoTのビジネスを加速させることにつながる。そう語るのは、携帯通信網を活用したIoT通信モジュールなどを手がけるTelit Wireless Solutionsだ。「5Gの商用展開により、日本ではスマートシティ、自動運転、スマートエネルギー、セキュリティなど幅広い分野で成長が期待できるようになる」と同社ではさらなるビジネスの拡大への期待を寄せる。
すでに同社は長年にわたって日本において、3大通信キャリアやカスタマとのパートナーシップにより、5GのみならずLTE Cat4なども含めた技術活用を進めてきた。また、「日本には優秀なサプライヤが多数本社を構えており、Telitが誇る高品質の製品を提供するための基礎となる高品質なコンポーネントを提供してくれている。そうしたサプライヤとの関係も含めて、日本でのビジネスが今後もより素晴らしいものになると思っている」(同)と、日本は単にサービスを提供するためだけの地域ではないとする。こうした日本への取り組みもあり、また2020年の東京五輪での5G商用サービス展開、という一大イベントも控えていることもあり、同社の日本地域でのビジネスは年々増加。2018年は前年比300%超の成長が達成される見通しで、アジア太平洋地域(APAC)の売り上げで2位。2019年も同200%超の成長により、APACトップの市場になることが見込まれる、と好調ぶりをアピールする。
現在、同社が提供するセルラーベースのIoT関連モジュールは低消費電力なものから、ハイパフォーマンスなものまで多岐にわたる。さらに、GNSSを用いた位置情報、LPWA、ワイヤレスM-Busといった周辺技術の拡充にも余念がない。また、IoTモジュールだけでは現在のIoT分野のニーズに対応が難しいことから、eSIM技術「simWISE」を活用したグローバルでの接続サービスの提供やデバイス管理、マネジメントなどを可能とするプラットフォームソリューション、果てはそうしたIoTソリューションをどのように活用するか、といったコンサルティングまで幅広いソフトウェア分野の提供も積極的に展開しているという。
期待される日本市場
そんな期待市場である日本地域に向けて、同社は主にLPWA向けの低消費電力モジュールシリーズと、ハイスピードモジュールシリーズの2つの角度から製品展開を進めている。LPWA向けには、すでにLTE Cat 1モジュール「LE910-JN1」がNTTドコモの相互接続認証を、「LE866A1-JS」がソフトバンクの認証をそれぞれ終了しているほか、同社のメインストリーム「xE910ファミリ」のLTE Cat M1/NB1(NB-IoT)向け製品シリーズ「ME910C1-J1」が、NTTドコモがFujisawaサステイナブル・スマートタウンにて実施する宅配ボックス向けサービスアプリケーションの検証向けモジュールとして活用されることも決定している。
一方のハイスピードモジュールとしては、LTE-Advanced Cat 9に対応したM.2タイプのLTE Cat.9通信モジュール「LN940A9」が、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアのいずれもから相互接続認証を取得しているほか、次世代のCat 18に対応した「LN960」の開発も進められており、2019年以降のより高速なアプリケーションのサポートを目指しているとする。
なお、同社では、今後一年間のうちに、出荷を開始するモジュールにはsimWISEを適用していく計画であり、これにより広がるIoTニーズへの対応をこれまで以上に図っていくとする。中でも日本は、これまでIoTになじみのなかった分野にもIoTが普及していくと見ており、Telitとしても、そうした市場の開拓を行なっていくことで、今後数年間は、年率200%の成長を続けていきたいという強気の姿勢を見せている。