日本学術会議(山極壽一会長)は、同会議がここ数年間に広く社会に発信してきた数多くの提言が国連持続可能な開発目標(SDGs)といかに密接に関係していることを紹介、解説する特集「SDGsから見た学術会議― 社会と学術の関係を構築する―」をこのほどホームページに掲載した。
SDGsは世界から貧困や飢餓、人や国の不平等をなくすことを目指し、気候変動への具体的対策も求めるなど17分野の目標と169の達成基準を定めている。「誰ひとり取り残さない」を理念に掲げて2030年を達成時期に設定しているが、国内での認知度が高いとは言えない状況だ。
学術会議は1949年に政府から独立した「特別の機関」として設立された。人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野を合わせて約84万人を数える日本の科学界を代表する機関。幅広い分野で審議、活動をし、長い間さまざまな問題に関して政策提言をしてきた。社会が科学に求めるものも時代の変化とともに少しずつ変遷してきた。例えば、2011年の東日本大震災以降は今後の防災の在り方、強靱(きょうじん)な国づくりに関して、最近は人工知能(AI)、IoTの進歩に伴う課題に関して、社会的議論が高まっている。こうした時代の要請を受けて学術会議は分野を超えた横断的な連携を深めてきた。
今回の特集は、提言に盛り込まれた学術会議の問題意識や活動内容と、SDGsが目指す内容の双方に対する理解を一層深めてもらうことを目指している。対象になった提言は2014年8月から18年1月までに出されたもの。いずれもSDGsの17の目標のいずれかと関連付けて提言テーマとともに紹介、解説している。
例えば、SDGs目標の1「貧困をなくそう」では提言「若者支援政策の拡充に向けて」(2017年7月)、目標2「飢餓をゼロに」では提言「気候変動に対応する育種学の課題と展開」(17年9月)、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では提言「性的マイノリティの権利保障をめざして」(17年9月)、目標6「安全な水とトイレを世界中に」では提言「持続可能な地球社会の実現をめざして」(16年4月)など。
このほか、目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」では提言「再生可能エネルギー利用の長期展望」(17年9月)、目標10「人や国の不平等をなくそう」では提言「いまこそ『包摂する社会』の基盤づくりを」(14年9月 )などと、17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」での「日本型の産業化支援戦略」(17年4月)まで順番にSDGsの各目標と提言を関係付けた上で提言内容の骨子を紹介している。
山極会長は昨年10月2日に開かれた日本学術会議総会で選任され、第24期会長に就任した。就任後に山極会長は会長メッセージを発表した。この中で現在の国際、国内情勢に触れた後「この激動期の中で日本学術会議が果たすべき役割とは何か、時代のすう勢を見極めつつ正しい道を選択していかねばなりません」「世界や社会の情勢が急速に動く中、(日本学術会議は)山積する課題に迅速に対応しつつ、しかし科学の持つ普遍性と高潔な理想を揺るがすことなく、日本の科学の推進と貢献に努めてく所存です」などとしている。
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