IDC Japanは6月19日、世界のAR(Augmented Reality:拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実)のハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスの2022年までの市場予測を発表した。なお、今回の発表は5月31日に米IDCによる発表をベースにしている。
世界のAR/VR関連市場の予測
最新の「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2017H2」によると、世界のAR/VRのハードウェア、ソフトウェアおよび関連サービスを合計した支出額は2017年の140億ドルから2018年は270億ドル、2022年には2087億ドルに達する見通しで、2017年~2022年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は71.6%と高い成長が見込まれている。
一般消費者向け分野は、2022年までの予測期間中AR/VR関連支出としては最大の分野の立場を維持すると想定されており、2022年の関連支出規模は530億ドルに達すると予測。それに続くのが小売業、組立製造業、輸送・運輸業であり、2022年でのこれら3分野の合計支出は560億ドルに達すると推測されている。
2018年にAR/VRの市場で存在感を示すのは引き続きVRゲームであり、関連支出規模は70億ドルを予測。2017年から2022年にかけての予測期間中、最も大きな伸びが期待されるユースケースは小売業での展示となり、119.3%のCAGRが見込まれ、それに研究・実験、映画やテレビでのエンターテインメント用途が続く。
そのほか、今回から新たにユースケースとして加わったものとしては、公共インフラのメンテナンスや高校までの学校で用いる360度教育向け動画などがある。
カテゴリー別では、ホストデバイス(PC、スマートフォン、ゲーム機など)が2018年は支出額のトップであり、合計支出額は100億ドルと推定しているほか、VRソフトウェアは2018年で57億ドルとなる。AR向けシステムインテグレーションや顧客向けARソフトウェア開発を抑え、ARビューワーは2022年までのCAGRが141.6%で最も高い成長が見込まれているという。
用途分類別では消費者向けが支出額142億ドルで2018年はトップを維持するものの、流通・サービス向けがCAGRが34.4%で2022年には720億ドルに達する一方、公共分野向けはCAGR 18.5%で2022年には335億ドルに達する見通しとなっている。
地域別では、2017年~2022年のCAGRが98.3%と最も高い米国がその地歩を固めることに加え、中近東およびアフリカ、日本と中国を除くアジア太平洋、および中南米は50%前後のCAGRが予測されている。2018年、中国ではホストデバイスの支出が102億ドルで全地域の中で最も多く、VRソフトウェアとARソフトウェアがそれに続く。
日本の動向
2017年~2022年の日本におけるCAGRは17.9%と他地域に比べ見劣りする状況が続いているが、ホストデバイスを除いたAR関連支出のCAGRは43.9%で2022年の関連支出予測額は14億6000万ドル、VRのCAGRは28.1%で2022年の関連支出予測額は25億3000万ドルとなり、底堅い成長が続くと想定している。
日本の予測を産業分野別に見ると、プロセス製造分野はCAGRが87.9%と高い成長が見込まれるほか、組立製造も同42.5%ながらも支出が安定した規模で成長することが予測されている。また、運輸分野のCAGRが47.6%ながらも10億ドルを超える市場性が見込まれるため、いずれも有望な分野であるという。
一方、教育分野は2022年の支出規模も1500万ドルと少なく、ユースケース拡大の素地となるべきAR/VRの経験者拡大の障害となることが明らかとなっている。