キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、日本電気、日立システムズ、フィラーシステムズとの4社共同で、アマゾンウェブサービス(以下、AWS)の環境において、医療情報を取り扱う際に参照される各種ガイドラインに対応するための「医療情報システム向けAWS利用リファレンス」を作成し、2018年7月を目途に顧客に無償提供を開始することを発表した。

  • 「医療情報システム向けAWS利用リファレンス」の概要と活用イメージ

    「医療情報システム向けAWS利用リファレンス」の概要と活用イメージ

近年、医療分野ではIT化が進められているが、医療機器の進歩等に伴うデータ保存量の増大や、ITシステムの運用管理を担うIT専門家の不足、IT投資負担などの課題がある。それらの解決策として、従量課金によるシステムコストの最適化や運用管理から解放するクラウドサービスが期待されている。すべての医療行為は、医療法等で医療機関等の管理者の責任で行うことが求められ、クラウドサービスを利用する場合も医療情報システムの構築や運用にあたっては、安全かつ確実な技術的および運用管理方法を確立し、安全管理やe-文書法への適切な対応を行っていく必要がある。

さらに、そのシステムで利用される医療情報は個人情報保護法における「要配慮個人情報」に該当し、厚生労働省、総務省、経済産業省の3省が定めた4つの医療情報システムに関するガイドラインに対し、必要に応じて医療情報に係る関連事業者や責任者が対策を施す必要がある。クラウド環境の導入を検討する場合、こうしたガイドラインに対応しているか否か各項目を検討整理し、必要となる対策項目の洗い出しや対応する情報、実施策の検討等を行う必要があり、これらがクラウドサービス導入における課題となっていた。

これに伴い、4社は、米国で医療情報システムのクラウド基盤として多くの事業者に利用された実績を有し、セキュアで柔軟かつ低コストなクラウドサービスを実現可能なAWS環境において、医療情報システムの様々な要件に対応するための考え方や関連する情報を整理検討した文書を提供することにより、医療情報システムにおけるAWS環境の活用を促進するとともに、システムコストの最適化や運用管理の効率化を支援する各種のITサービスを広く提供する。

第一弾の取り組みとして、医療情報を受託する事業者となる立場の情報処理事業者に求められる経済産業省発行の「医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン」に関するリファレンスを顧客に提供を開始する。また、今後その他のガイドラインに対応するリファレンスも年内を目途に順次提供していくという。その中では、現在改訂作業が進められており本年7月を目途に公開が予定されている「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(第1版)」にもいち早く取り組む予定だとしている。

同リファレンス文書により、医療機関や医療情報システム事業者は、各ガイドラインで定められたセキュリティ対策・安全管理に対し、AWSのクラウドサービスが適合するか簡単に調査でき、調査期間を大幅に短縮することが可能となる。さらに4社は、医療情報の取り扱いや各ガイドラインに関する知見を生かして、AWS導入支援サービスなど関連するサービスを各社それぞれ提供し、システムコストの最適化や運用管理の効率化を支援していくという。