KDDIは6月15日、都内で記者会見を開き、法人向けに工場の生産設備の状態を可視化し、故障予兆を検知するサービス「KDDI IoTクラウド ~工場パッケージ~」の提供を開始すると発表した。
新サービスは工場内の装置にセンサを取り付け、工場の生産設備の状態をデータとして収集し、それらのデータを分析することで故障予兆の見地からアラート通知までをワンストップで提供する。これにより、点検に関わる作業工数の削減によるコスト削減や設備故障を未然に防ぐことによる生産性向上などに貢献できるという。
また、新サービスはARISE analyticsの機械学習機能を提供するアプリケーション「ARISE Intelligent Factory - ARISE Predivtive Maintenance」を使用することで生産設備の状態を可視化するだけでなく、生産設備ごとに正常もしくは以上状態を把握するための最適な分析モデルをAIによる機械学習を活用して独自に作成し、作業員の判断によらない生産設備の故障予兆を実現する。
KDDI ビジネスIoT企画部 部長の原田圭悟氏は「MM総研の調査によると、製造業においてIoTを導入する割合は市場全体の3割近くを占め、関心が高い。30人以上の事業所は全国に4万4595カ所も存在し、大きなターゲットとなる。点検工数の削減や生産設備の可視化による故障予兆をとらえたい、工場内Wi-Fiが混信していることから安定した通信方法の模索したいなど、これらのニーズを満たすのが新サービスだ」と述べた。
新サービスは基本セットと簡易分析オプション、高度分析(AI)オプションを提供。基本セットは工場内の装置に電流や振動、温度など向上の設備に応じた各種センサを取り付けて、クラウド上にデータとして収集・蓄積することで、生産設備の状態を可視化します。また、作業者が任意に設定した閾値が超過した場合はアラート通知される。
簡易分析オプションはARISE Intelligent Factory - ARISE Predictive Maintenanceの分析エンジンにより、センサから取得した情報(故障データなしでも予測モデルの構築が可能)をベースに分析モデルを自動で作成。複数作成された分析モデルの中から、データ分析者が最適な分析モデルを選定し、分析モデルにより異常と判定された場合は、アラートを通知することで、設備の故障予兆を早期に発見できるという。
高度分析オプションは、簡易分析オプションに加え、自動作成された分析モデルをAIが継続して最適化。ユーザーのフィードバックをもとに分析モデルを更新し、設備の故障予兆精度を向上させる。
ARISE analytics サイエンスディビジョンデータサイエンティストの堀越真映氏はAI活用のポイントとして「AIは万能ではないため活用領域と人でカバーする領域の見極めが重要であり、技術は急速に進化していることからキャッチアップと移り変わりに対応できる仕組みづくりやパートナーが必要だ。また、データは技術のみでは活用できず、目的に合った良質なインプットデータとチューニングが肝になる」と話す。
また、同氏は「機械学習の中でも故障検知など、幅広く使われるアルゴリズムは複数存在するが、そのまま工場に適応するのは難しい。理由としては、設備に応じて予測する検知が異なるほか、生産ラインの稼働状況が一定ではない、またセンサの値が工場のオペレーションの影響を受けるからだ。そのため、ARISE Predivtive Maintenanceのアルゴリズムは機器の稼働状態と時系列特徴を推定し、予兆検知処理を実装している」と、説く。
価格(税別)は、いずれも月額で基本セットの振動センサが6400円/個、温度センサが20円/m、電流センサが600円、レベルセンサが6700円、ロガーが5000円、クラウド使用料が5万円/ID、3万円/ロガー、保守が2万3120円。簡易分析オプションはクラウド使用料が基本セット+5万円/ID、同2万円/ロガー、高度分析オプションが同15万円/ID、同2万円/ロガー。