東京大学医学部附属病院は、スマートフォンやタブレットコンピュータでCTやMRI、レントゲンX線検査など医用画像を手軽に閲覧できる無料アプリケーション「eMma」を開発したと発表した。同アプリは、東京大学医学部附属病院脳神経外科の金太一助教の研究グループが開発したもので、Kompathからリリースされた。現在は、iPhoneおよびiPadにのみ対応している。

  • 患者選択画面。取り込んだ医用画像データは、医用画像の種類や検査ごとにアプリが自動で仕分けしてくれる(出所:東京大学医学部附属病院ニュースリリース)

    患者選択画面。取り込んだ医用画像データは、医用画像の種類や検査ごとにアプリが自動で仕分けしてくれる(出所:東京大学医学部附属病院ニュースリリース)

医用画像の種類は、レントゲンX線検査、CT、MRI、核医学検査など非常に多種多様だが、これらの医用画像は特殊なフォーマットで作成されているため、一般的なデジタル画像と違って簡単に見ることができないという現状がある。しかし、遠隔医療や災害時などの救急医療において、病院外で簡単にすばやく医用画像を見ることができる機能が必要とされるほか、患者でも自身の医用画像をじっくり見たいと思う人は少なくなく、どこでも誰でも簡単に医用画像を見ることができるツールが望まれていた。

  • 医用画像の閲覧画面(出所:東京大学医学部附属病院ニュースリリース)

    医用画像の閲覧画面(出所:東京大学医学部附属病院ニュースリリース)

今回開発されたアプリでは、説明書を熟読しなくても直感的で正確な操作を可能とさせるユーザーインタフェースを実装。また、医用画像の世界的標準規格であるDigital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)フォーマットに対応しているほぼすべての医用画像(レントゲンX線検査、CT、MRI、核医学検査、脳血管撮影検査など)の高速な表示が可能となっている。

さらに、画像の拡大や平行移動、輝度値の調整、観察断面の再構成など、医師にとって必要十分な機能を実装しており、撮像時期の異なるデータや、CTとMRIなど異なる種類の医用画像の同時表示と、それらのスライス移動がシンクロする機能も実装している。そのほか、医用画像の種類、検査日、撮像条件、患者名などの画像に付加している情報に関して、表示・非表示を選択することもできるという。

同アプリにより、これまで敷居の高かった医用画像情報が広く社会に行きわたり、一般の人の医学的知識の啓発や遠隔医療、災害地や医療過疎地での医療の質向上、および医用研究開発の促進が期待される。また、医療従事者間もしくは医療従事者と患者との間において、医用情報がより正確に共有されることが見込まれるということだ。