米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)は、昨年夏の皆既日食時に米国の太陽光発電が受けた影響に関する分析結果を公表した。それによると、西部州では約5.9GWの出力低下があったという。報告書はNRELのサイトに掲載されている。
2017年8月21日、米国ではオレゴン州からサウスカロライナ州にかけての幅70マイル(約113km)にわたるコースで皆既日食がみられ、その他の地域でも部分食となった。この事象は、太陽光発電システムが着実に増加しつつある米国の電力網に対する日食の影響に関する研究機会を与えるものでもあった。
研究チームのSantosh Veda氏は、今回の報告の狙いについて「嵐や日食のような広域的な事象が太陽光発電の出力と電力網の信頼性に対して及ぼす影響を理解するためのフレームワークとツールを開発すること」であると説明している。こうしたツールは太陽光発電の普及とともに重要性を増していくと考えられる。NRELでは広域事象による電力網への影響を低減するためにツールを利用することができるとしている。
研究チームは、日食の影響を測定するため、米国西部9州にわたる広域電力網「ウェスタン・インターコネクション」などにおける負荷や発電量などのリアルタイムデータを使用した。ウェスタン・インターコネクションからのデータ収集は、日食の前後3日間にわたり1分間隔で行った。さらに日食の進行中には10秒ごとにデータ収集を行った。日食による影響とその他の主要な気象事象との違いを調べるため、2017年上半期の電力データも利用した。太陽光発電の全体的な出力は日ごとに変わるものであるが、日食時の出力変動には際立ったものがあったと報告されている。
太陽光発電所および個人住宅の屋根置き太陽光発電システムについて、通常の一日の発電量と日食時との比較も行った。研究対象となった地域全体では、大規模太陽光発電所が出力15.8GW(ギガワット)、屋根置きシステムは出力9.2GWの発電能力をもっているとされる。通常の一日の場合、太陽光発電所の出力は12GW以上あったが、日食時には4GW程度の出力低下があったと見積もられた。屋根置きシステムのほうも、通常出力8GW程度のところ、日食時には1.9GWの出力低下があったとした。合計すると日食時に5.9GWの出力低下があったことになる。
報告書は、日食によって太陽光発電の一時的な出力低下があったものの、電力網の安定性と信頼性には影響がなかったという結論を出している。これは、水力発電、天然ガスおよび石炭火力発電によって電力需要の変動に容易に対応できたからであるという。また、太陽光発電が利用できない間の発電コストを考慮しても、太陽光以外の補完的エネルギー源のコスト増は最小限であることがわかったとしている。