アナログ・デバイセズ(ADI)と同社のアソシエイト・パートナーであるサクラテックは6月6日、24GHzレーダーを活用したバイタルセンサプラットフォームを開発したと発表した。

同プラットフォームは、サクラテックの24GHz対応MIMO FMCWレーダーシステム「miRader 8」に新開発のバイタルセンサ向けアルゴリズムを搭載したもの。ADIのレーダー専用チップセット「ADF4159/5901/7251/5904 etc」に対応しており、複数人の呼吸、心拍、距離/方位情報の同時測定を可能としている。

また、レーダーでの測定であるため、光学カメラのような明るさによる影響を受けない。そのため、人物の特定が難しいことから、プライバシーの侵害といったことを気にすることなく、ターゲットのバイタルデータを取得することが可能となる。

  • 24GHzレーダー活用バイタルセンサの概要

    24GHzレーダー活用バイタルセンサの概要

さらに、用いられている24GHzレーダーチップセットは、すでにADIが発売している製品だが、MIMO技術の採用により、ドップラーのような特定のターゲットを測定するのではなく、1度ごとにビームフォーミングを行なうことで、プラットフォーム上では4人までターゲットを補足、バイタルデータを計測することを可能としている。実際のデバイス能力としては、10人程度までは認識可能であるとのことだが、開発環境として提供されるユーザーインタフェースがビジーになってしまうことから、4人まで、ということにしているという。

  • 24GHz FMCW MIMOレーダーの概要

    24GHz FMCW MIMOレーダーの概要

こうした得られたデータは、サクラテックが提供するクラウドサービス「miRader Cloud」にアップロードし、そのデータから、機械学習などを用いて新たなアルゴリズムを開発することも可能。そのため、実際のアプリケーションとして高齢者のケアサービスや睡眠時無呼吸症候群、乳幼児突然死症候群のモニタリング補助といった使い方が想定されているほか、機械学習を用いた先進アルゴリズム開発にも適用することができる。

  • 24GHzレーダー採用バイタルセンサの活用が期待されるシーンイメージ

    24GHzレーダー採用バイタルセンサの活用が期待されるシーンイメージ

ADIおよびサクラテックでも、24GHzレーダーを用いたアプリケーションの商用化を加速するためのプラットフォーム、という位置づけとしており、データも「RF信号」「デプスマッピング計算」「複数ターゲット検知」「ターゲットの振動計算」「パターン検知とフィルタリング」の各段階の生データをクラウド上にアップロードして活用できるため、使うユーザーのレベルに応じた開発ができるようになると説明している。

  • センサシステムの全体構成イメージ

    センサシステムの全体構成イメージ

  • 取得したデータは、処理される各段階ごとに当該生データをクラウドにアップロードできる

    取得したデータは、処理される各段階ごとに当該生データをクラウドにアップロードでき、それを活用したアルゴリズム開発などができる。クラウドは、サクラテックの提供サービスとなっているが、バックグラウンドはAWSを活用しているとのことで、AWS以外のクラウドサービスを使いたいという声にも柔軟に対応が可能だとしている

なお、同システムおよび評価キットは、サクラテックとその代理店を通じて購入することが可能で、センサモジュール「miRadar 8」は量産価格 8万円(10台単位、税別。ソフトウェアライセンス費用が別途必要)、評価用キット「miRadar 8 EV-2」(VSMソフトウェア付き)が定価75万円(税別)、データ分析用クラウドサービス「miRadar 8 VSM cloud data service」については価格は個別相談となっている。

  • 24GHzレーダー・バイタルセンサのモジュールと開発キット
  • 24GHzレーダー・バイタルセンサのモジュールと開発キット
  • 24GHzレーダー・バイタルセンサのモジュールと開発キット
  • 24GHzレーダー・バイタルセンサのモジュールと開発キット
  • 24GHzレーダー・バイタルセンサのモジュールと開発キット。開発キットには光学カメラが搭載されているが、実際の使用時には不要。また、光学カメラ以外にも赤外線カメラなどに置き換えることも可能だという。その測定角度は左右45度ずつ、測定距離は室内で4-5m程度としているが、誤差を気にしないのであれば、もう少し角度を広げるといったことも可能だという

  • 開発プラットフォームを用いたデモの様子
  • 開発プラットフォームを用いたデモの様子
  • 開発プラットフォームを用いたデモの様子。プロジェクタの画面の右が時系列のデータ。左が光学カメラでわかりやすく状況を表示した画像。縦に並んだ3つの値はHが心拍、Rが呼吸数、一番下がセンサからの距離。横に引かれている青い線は、センサからの距離を簡易的に表示したもの