物質・材料研究機構(NIMS)、東京大学(東大)、理化学研究所(理研)、京都工芸繊維大学による研究チームは、結晶構造を自在に制御できる電子伝導性配位構造体が蓄電池の電極材料として有望であることを発見したと発表した。
この成果は、NIMSエネルギー・環境材料研究拠点主任研究員の坂牛健博士と同機構研修生・東大理学系研究科博士課程の和田慶祐氏、東大理学系研究科の西原寛教授らによるもので、ドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に掲載され、オンライン版が5月28日に公開された。
配位構造体と呼ばれる材料群は、結晶構造を自在に制御でき、内部空間を活かして選択的な分子吸着性などさまざまな物性の制御や機能の付加ができることで注目されている。最近では、エネルギー貯蔵に関わる物性を調節することで、配位構造体を次世代蓄電池の電極材料として機能させ、蓄電池の高エネルギー密度化や長寿命化を目指す研究が盛んだが、配位構造体の電子伝導性が低いことが電極材料としての応用の障壁となっていた。
今回、NIMSと東大の研究チームは、金属的電子伝導性を示す電子伝導性配位構造体 が、これまでの物質とは異なり電子の移動を伴ったエネルギー貯蔵反応に対して高い特性を示すのではと予想した。この仮定のもと、理研と京都工芸繊維大学の研究チームと協力して、電子伝導性配位構造体の詳細な電気化学特性や大型放射光施設 SPring-8を用いた結晶構造の調査を詳細に行った。
その結果、電子伝導性配位構造体がイオンが電気化学的に物質の中に出入りすることで、エネルギーを貯めたり放出したりするエネルギー貯蔵機構を示すこと、代表的二次電池正極材料系である酸化物と比肩する特性容量を持つことを、世界で初めて発見した。
今後は、電子伝導性配位構造体の電気化学特性と構造の相関をより包括的に調査し、そのエネルギー貯蔵原理を解明することで、蓄電機能の高特性化に必要な鍵因子を明らかにするなど、有望な蓄電材料の探索を加速するための指針を示すことができることが期待されるとしている。