九州大学(九大)は、これまで謎とされていたアクチノバクテリアのグループのミスマッチ修復機能の謎を明らかにしたと発表した。
同成果は、九州大学農学研究院の石野園子 准教授、フランスの研究機関であるEcole PolytechniqueのHannu Myllykallio 教授らとの共同研究研究グループによるもの。詳細は国際核酸研究誌「Nucleic Acids Research」誌のオンライン版に掲載された。
生物は、遺伝情報を担うDNAが傷つけられた際にそれを修復する能力を備えている。DNAは2種類の塩基対(A-T、G-C)から構成されているが、それ以外の組み合わせはミスマッチ塩基対と呼ばれ、そのまま放っておくと遺伝子突然変異の原因となることが知られている。
これを修復するミスマッチ修復機構は生物が自らの遺伝情報を守るための重要な機能の1つだ。これまで大腸菌などの真正細菌、ヒトなど真核生物で多くの研究が報告されており、2つのタンパク質(MutS、MutL)がミスマッチ修復で重要な役割を果たすことはすでに明らかになっていた。
研究グループは今回、食品や医薬品向けのアミノ酸の生産菌として知られる細菌種「Corynebacterium glutamicum」が、既知のタンパク質とは異なるミスマッチ修復機構を有することが予想されていた酵素「EndoMS(nucS 遺伝子産物)」を有することに注目。同遺伝子の欠損株を作製して調査した結果、突然変異率が顕著に上昇することを発見した。
また、真正細菌のクランプ分子であるDNAポリメラーゼIIIのβサブユニットの共存下で、EndoMSと同様の基質認識と切断が生じることも分かった。さらに、クランプ分子への結合に関わる部分が欠失した変異EndoMSを産生する変異株を作製。EndoMS/nucSが関与する細胞内の突然変異と試験管内DNA切断反応の相関を観察することに成功した。これらの結果から、この修復機構がDNA複製と連携して機能することで、ゲノム情報の安定な維持に寄与していることが示された。
今回の成果を受けて研究グループは、今後アクチノバクテリアに属する結核菌が、薬剤耐性を獲得しやすい仕組みについての理解にも貢献するものとしても期待できるとコメントしている。