5月23日から25日の3日間、東京ビッグサイトにて開催された「運輸・交通システムEXPO 2018」。人手不足の影響や労働環境、物流における安全・安心を担保するべく、業界は様々なアプローチで課題の解決策を模索しており、本イベント会場にも数多くの来場者が足を運び、自社が抱える課題解決に役立つソリューションがないか真剣な眼差しでブースを巡る姿が見受けられた。今回ピックアップするシステム計画研究所(ISP)ブースで展示されていた「『ながらスマホ』検出AI」は、ともすれば乗務員を監視しているとネガティブな印象を抱かれるかもしれないが、安全・安心を担保する上で重要な“乗務員の意識改革”にも繋がるであろうAI技術を用いたユニークな“ながら運転”防止に役立つソリューションだ。

  • 「運輸・交通システムEXPO 2018」、ISPブースより

    「運輸・交通システムEXPO 2018」、ISPブースより

この「『ながらスマホ』検出AI」は、自動車の走行速度や距離といった運転記録を集積するデジタルタコグラフ(通称:デジタコ)やドライブレコーダーといった運輸経営をサポートするタイガー社とISPによって共同で開発されたソリューションだ。ISPが得意とするAI技術を駆使し、車内に設置されたドライブレコーダーの映像を元に運転中の通話やスマートフォンの操作を検出、運行管理者はクラウド上に集められた解析結果を確認することが可能となる。

  • ドライブレコーダーとAIによって、乗務員が運転中に通話やスマートフォンの操作といった事故に繋がりかねない行為を行っていないかを検出するISPの「『ながらスマホ』検出AI」

    ドライブレコーダーとAIによって、乗務員が運転中に通話やスマートフォンの操作といった事故に繋がりかねない行為を行っていないかを検出するISPの「『ながらスマホ』検出AI」

「AIを用いるとなると何かと超えなければならないハードルが多いのでは?」とお思いの方も多いかと思うが、この「『ながらスマホ』検出AI」導入に関してはその心配は杞憂に終わりそうだ。というのも、非常に少ない学習材料(写真や動画)からスタートでき、学習自体もすぐにその場で行うことができるというISPのAIコアエンジン「REEL」によって支えられており、通信機能を備えたドライブレコーダーがあればすぐに導入することが可能だという。ブースでは実際に「『ながらスマホ』検出AI」のデモンストレーション映像が公開されていたが、運転中にスマートフォンでの通話行為を検出すると即座にアラートをあげていた。また、ドライブレコーダーの映像内にスマートフォン本体が映っていない、いわば“スマホを操作しているのでは?”と疑われる状況であっても、乗務員の姿勢の乱れ等から操作行為を検出、アラートをあげていた。

  • こちらが「『ながらスマホ』検出AI」のデモンストレーションで用いられていたドライブレコーダー「Samly(サムリー)」。ハイビジョンWカメラに加え3G通信機能を搭載しており、トラックやタクシーといった様々な車種に設置することが可能だ

    写真左側に映るのはドライブレコーダーの映像。写真右のグラフがAIによる“ながら運転”検出の結果がグラフ化されたもの。中央の値より上に振れた部分がスマホ操作を行っていた部分となる

  • こちらが「『ながらスマホ』検出AI」のデモンストレーションで用いられていたドライブレコーダー「Samly(サムリー)」。ハイビジョンWカメラに加え3G通信機能を搭載しており、トラックやタクシーといった様々な車種に設置することが可能だ

    こちらが「『ながらスマホ』検出AI」のデモンストレーションで用いられていたドライブレコーダー「Samly(サムリー)」。ハイビジョンWカメラに加え3G通信機能を搭載しており、トラックやタクシーといった様々な車種に設置することが可能だ

少ない学習材料でAIを育てることが可能なため、「『ながらスマホ』検出AI」はその拡張性も特徴といっていいだろう。今回フィーチャーされたスマートフォンでの通話や操作といった行為以外でも、例えば片腕でしかハンドルを握っていない、とっさの操作に支障を来す乱れた運転姿勢、うつらうつらしてしまう居眠り運転といった、他の危険運転行為を検出したいという要望に対しても、比較的容易に実現させることが可能だという。AIを利活用して危険運転行為をチェックし“万が一の事態”を未然に防ぐ。単に監視のみではなく、乗務員教育の一環として安全・安心を常日頃から心掛ける手助けにもなってくれるのではないだろうか。