ヤマハ発動機は5月30日、2018年6月14日付けで、神奈川県横浜市に、「ロボティクス領域」、「知能化領域」、「IT領域」における先進技術開発と高度人材の獲得・育成、およびオープンイノベーションの推進を目的とした開発拠点「ヤマハモーター アドバンスト テクノロジーセンター(横浜)」を開設すると発表した。
ソフトウェアエンジニアの獲得・育成に注力
同拠点を開設するに至った背景について、同社 先進技術本部の平野浩介フェローは、「今や、東京ならびに神奈川にIT技術分野の人材の6割が集まっていると言われている。同センターは、そうした人材を獲得するという意味合いがある」とする。
では、どういった人材の獲得を進めるのか。同社はバイクや電動アシスト自転車、ボートといったモビリティや、半導体製造装置のマウンタ、産業用ロボットといったメカトロニクス関連で知られているが、現在、先進的な技術基盤として、「ロボティクス」「知能化」「IT」といった3つの技術に注力することで、さらなる成長を目指している。
「製造業だけではないが、今の時代、デジタル技術を活用しないと成長は難しい。そうした時代のキーワードは「データ」と「つながる」という2つ。さまざまな場所で生み出されるデータをつなげて、集積し、解析を行い、そこから得た知見から新たな価値の創造を図ることが求められており、これをヤマハ発動機としては、工場、製品、顧客といった3つの側面に展開していく」とのことで、同社が販売するすべての製品について2030年をめどにすべてネットワークに接続をしていき、そこで生み出される新たな価値の提供を生み出していくために必要なソフトウェア関連の人材を中心に採用を進めて行きたいとする。
また、「データサイエンティストなどは即戦力が採用できれば良いが、昨今はそうした人材の獲得は激しいことから、センターを立ち上げた暁には、そうした分野の人材育成を進める教育プログラムも実施し、地力の底上げを図っていく」ともしており、育成と獲得の両面でソフトウェア関連人材の拡充を進めるという。
ロボティクスの成長を支える拠点に
同センターは、先進技術基盤領域の中核センターとなるべくが設立されるものであり、データサイエンティストやデジタルマーケティングといったデジタルトランスフォーメーションを推進する一方で、ロボティクスの先行技術開発を担うAI(人工知能)やビッグデータ分析、予兆検知などのデータ処理のほか、マシンビジョンやサーボモータの高度制御、自律移動ロボットを実現するためのソフトウェアエンジニアの拡充も進めていく。
ソフトウェアエンジニア中心で産業機器の開発などができるのか、という点については、リアルタイムで磐田本社と接続できる環境を構築しており、試作機の稼動などは磐田本社で、その制御は横浜で、といったことも可能になるという。
また、関東に拠点を持つベンチャー企業や大学の研究室などとのオープンイノベーションの推進という役割も担うとしており、ロボティクス関連のソフトウェア開発の拡大を目指すとしている。
なお、拠点の場所は新横浜駅から徒歩7分ほどの場所であり、ここを選んだ理由については、「首都圏でありながらも、磐田市や浜松市(ロボティクス事業部の拠点)からも新幹線で1本で来ることができる場所」であったためだという。また、今回はスモールスタートアップで、関東に拠点を設立する、ということが目的であったこともあり、開設当初の人員は数名程度。これを2018年末ころまでに、15名程度へと拡充を図り、2021年には50名程度までさらに人員を拡充させていく計画だとしており、そうした人員規模の拡大に併せて、新横浜の拠点を拡充していくか、東京都内に新たに拠点を移すかといった検討も進めていければとしていた。