丸紅と日立製作所は30日、日立のIoTプラットフォーム「Lumada」(ルマーダ)を活用した高度な市場分析モデルの本格導入を開始したことを発表した。
電力小売の完全自由化による新電力市場が着実な増加を見せるなか、丸紅と日立は昨年8月から電力需要予測に向けAIを活用した電力小売市場の独自分析モデル構築に向けた取り組みを行っており、今回その本格導入が開始した。
子会社である丸紅新電力が約5千GWh(2017年度)を供給する丸紅は、4月1日よりIoT・ビッグデータ戦略室を「デジタル・イノベーション部」と改組。デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル創造へと力を入れており、今回のモデル構築で強みを持つ電力事業分野での競争力強化を図る構えだ。
AIやブロックチェーンはもちろん、大規模なインフラから家電製品まで広範な事業をカバーする日立のIoTプラットフォーム「Lumada」を活用した取り組みは、両社の強みを機械学習エンジンと掛け合わせることで独自の市場分析手法を構築。モデルを用いた取引価格や需要傾向の分析や予測の検証から業務改善、コスト削減に一定の効果が認められたため、本格導入の開始へと至っている。
Lumadaは、OT(Operational Technology)とIT(Information Technology)の各アセットを取り込む日立のIoTプラットフォーム。先端IT技術と日立が長年培うマシンデータやヒューマンデータなどのOTアセットが融合することで、エネルギーや鉄道、エレベータから家電まで独自のアセットからインテリジェントを生み出す点に特徴がある。
世界各地のエネルギー分野のインテリジェンス創出にも活躍するLumadaは、ポーランドにおける系統安定化技術と風力発電出力のリアルタイム制御技術や蓄電システム、スロベニアにおける配電会社向けクラウド型統合配電管理システム構築のための次世代配電網・スマートコミュニティ事業、ドイツの都市公社と推進中の電力市場取引価格連動した取引自由化など成果を重ねている。
両社は、2016年4月に開始した電力小売の完全自由化に伴う、新電力市場が毎年3~4%の拡大を続けており、市場分析手法の高度化が重要な課題となっていることを背景に挙げている。