IDC Japanは5月28日、国内情報セキュリティ市場の2017年~2022年の予測を発表した。これによると、ソフトウェア製品とアプライアンス製品を合わせた情報セキュリティ製品の国内市場規模は、2017年の2973億円から2022年にかけて年間平均成長率(CAGR)3.9%で成長し、2022年には3602億円に拡大するという。
同社はセキュリティ市場を、セキュリティソフトウェア市場及びセキュリティアプライアンス市場で構成するセキュリティ製品市場と、セキュリティサービス市場に分類している。
セキュリティソフトウェア市場
このうち2018年の国内セキュリティソフトウェア市場は、自治体の強靭化施策などで好調だった2017年と比べ、成長率が鈍化するものの、アイデンティティ/アクセス管理やセキュリティ/脆弱性管理の内部脅威対策製品において、EU(欧州連合)の一般データ保護規則(GDPR)などの法規制やコンプライアンスへの対応の需要が拡大し、成長率は2017年比3.2%と予測している。
2019年~2020年では、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック/パラリンピックの開催を機に標的型サイバー攻撃が多発するとの予測があり、重要社会インフラへのサイバー攻撃の対策需要と、改正個人情報保護法やGDPRなどの法規制による個人情報への保護対策強化により、同市場に対する需要が拡大するという。
一方、2021年~2022年にかけては2020年までの需要拡大の反動から同市場への需要が軟化すると想定している。これらにより、国内セキュリティソフトウェア市場の2017年~2022年におけるCAGRは3.5%となり、市場規模は2017年の2441億円から2022年には2892億円に拡大すると推測。
セキュリティアプライアンス市場
2018年の国内セキュリティアプライアンス市場は、悪質化するサイバー攻撃によるセキュリティ侵害を最小限に抑え、レジリエンス(回復力)を高めることができるソリューションへのニーズが高まり、UTM(Unified Threat Management)とIDS/IPS(Intrusion Detection System/Intrusion Protection System)の需要がエンドポイントセキュリティなどの外部脅威対策製品との連携ソリューションで拡大し、成長率は2017年比12.6%と予測している。
2019年~2020年は、セキュリティソフトウェア市場と同様の背景から、需要が拡大するほか、2021年~2022年は2020年までの需要拡大の反動から需要が軟化するという。同市場の2017年~2022年におけるCAGRは5.9%となり、市場規模は2017年の533億円から2022年には710億円に拡大すると想定。
セキュリティサービス市場
コンサルティングやシステム構築、運用管理、教育/トレーニングサービスを含むセキュリティサービス市場に目を転じると、2017年の市場規模は7581億円であり、2022年にかけてCAGR 5.4%で成長し、2022年の市場規模は9870億円に拡大するという。
2018年の同市場は、インシデントレスポンスサービスやフォレンジックサービスなどセキュリティ侵害に対するコンサルティングサービス、サイバー攻撃に特化した外部脅威対策製品の構築サービス、セキュリティインシデントを常時監視するマネージドセキュリティサービスの運用管理サービスへのニーズが高まり、成長率は2017年比5.1%と予測。
2019年以降はデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展によって、オンプレミス環境だけではなく、クラウド環境へのセキュリティシステムの構築や運用管理サービスの需要が拡大するという。
特に2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック/パラリンピックと大規模なイベントでサイバー攻撃が多発するとの予測から、セキュリティサービスの需要拡大を予測している。
同市場の2017年~2022年のCAGRは5.4%となり、支出額ベースの市場規模は2017年の7581億円から2022年には9870億円に拡大。ランサムウェア攻撃などのサイバー攻撃に対しては、マルウェアの侵入を阻止するだけなく、侵入後のマルウェアの活動を迅速に検知し対処することで感染被害を最小限に抑えることができるレジリエンスが求められる。
レジリエンスを高めるためには、機械学習機能などAI(人工知能)による高度な脅威インテリジェンスを活用した外部脅威対策製品間の連携ソリューションによる早期の検知と迅速な対処が有効だという。