小惑星探査機「はやぶさ2」の津田雄一プロジェクトマネージャと、民間ロケットの開発を進める実業家の堀江貴文氏によるトークショーが5月26日、宇宙ミュージアム「TeNQ」にて実現した。まもなく小惑星に到着する探査機と、宇宙到達に再挑戦するロケット。今夏の宇宙開発を盛り上げるプロジェクトのキーパーソン2人が揃った形だ。
このイベントは、デアゴスティーニ・ジャパンの"はやぶさ2応援プロジェクト"の一環として行われたものだ。同社は、マガジン形式で模型を組み立てるパートワークの新商品として、「小惑星探査機はやぶさ2をつくる」を現在開発中。今回のイベントでは、その試作3号機が初めて披露された。
このはやぶさ2企画では、同社としては初めて、クラウドファンディング方式を採用した。事前の申し込み数が5,000件以上あれば商品化するということで、実現するかどうかは読者の反響次第。申し込みの期限は7月末となっており、現時点では、あと2,000件の申し込みが必要という状況とのことだ。
模型の開発には、はやぶさ2のプロジェクトメンバーが監修として関わっており、完成度の高さは折り紙付き。イオンエンジンやレーザーレンジファインダなどは点灯が可能。さらにローバーやターゲットマーカーなどは着脱可能になっており、小惑星へのタッチダウンなどのシーンをリアルに再現できるだろう。
"監修"といってもさまざまな程度があるが、津田プロマネはかなり本気で取り組んでいる模様。今回披露された試作3号機では、リモコンでターゲットマーカーを投下する機能が追加されたが、この機能も津田プロマネがリクエストしたものだという。「まさかできているとは…」と、津田プロマネもこの機能の実装に驚いていた。
ただ技術者として、まだまだこだわりのポイントはあるようで、司会から「さらに期待することは?」と問われ、「太陽電池パドルの自動展開機能も欲しい」と回答。現時点でも、手動で展開/格納することは可能なのだが、さすがにこれは難しいらしく、後ろにいた開発スタッフは頭を抱えていた。
ここまでリアルに再現していると、各機器がどこに搭載されているのか、全体を見ながら把握するのに便利。津田プロマネは、「降下運用のときには、即断即決で正しい判断が求められる。そのときに正確な模型があるのは良いかも」とコメントしており、もしかしたら"業務"で活用されることもあるかもしれない。
津田プロマネは、特に子供達にこの模型を作って欲しいという。「探査機の1つ1つの形には全て意味がある。格好良さは求めずに、機能だけを考えて作っている。子供達がそういうことを学びながら組み立ててくれると嬉しい」と期待を述べた。
一方、MOMO2号機の打ち上げが延期になり、宇宙への到達が仕切り直しになった堀江氏。ちょうど前日には、打ち上げのリハーサルを行ったそうで、点火までの手順を全て確認した。前回の延期の原因となった窒素漏れについては、すでに対策済み。リハーサルは「問題も少しあったが、概ね順調」とのことで、今夏の打ち上げに意欲を見せた。
MOMOを開発しているのは、堀江氏が創業したインターステラテクノロジズ。津田プロマネが「我々がやっているのはインタープラネタリ(惑星間)。ロケット開発から始めたのにインターステラ(恒星間)と名付けるところにすごみを感じる」と述べると、堀江氏は「目指しているのは恒星間航行。まだサブオービタルで全然届いていないけど」と苦笑い。
堀江氏は「今の宇宙開発の大きな問題点は、ロケットの費用が高いこと。もし安い費用でバンバン打ち上げられるようになれば、大学の研究室レベルで世界初の実験ができるようになる。鳥人間コンテストのノリで宇宙が使えると、技術がすごく進化する」と指摘。大学衛星の経験もある津田プロマネは「敷居が下がれば世界が広がる」と同意した。
対談の最後に「はやぶさ2にはぜひ大成功して欲しい」とエールを送った堀江氏だが、「はやぶさ3とか4のときは、我々のロケットでぜひ打ち上げさせて欲しい」と、しっかりアピールすることも忘れなかった。
デアゴスティーニの「小惑星探査機はやぶさ2をつくる」は、全30号。1号当たりの価格は2,490円で、全号分の前払いなら73,700円となる。創刊号の発送時期は2018年秋の予定となっているため、はやぶさ2のリュウグウ滞在中に完成するはずだ。確実に欲しい人はぜひ、期間中の申し込みを忘れないようにしよう。