新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、NEDOプロジェクトにおいて、九州大学(九大)が開発した新たな低GWP冷媒の状態方程式が、世界標準の熱物性データベースであるアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のREFPROPに登録されたことを発表した。

現在、冷凍空調機器用冷媒として使われているHFC(ハイドロフルオロカーボン)などの代替フロンは、温室効果が高いため地球温暖化を促進するという問題がある。HFCの市中ストック量の増加に伴い大気中への排出量も増加し、その温室効果の高さによる環境影響が問題となっている。こうした背景のもと、温室効果ガス排出量削減を強化するために、パリ協定などの地球温暖化対策に係る国際的な規制が進み、現在使用しているHFC冷媒が使用できなくなる可能性がある。

そこでNEDOは、関連プロジェクトにおいて、業務用や家庭用のエアコンを対象に、冷媒や機器の開発を行うとともに、新たな低GWP冷媒の性能や安全性評価に取り組み、環境負荷の低い空調機器の開発を進めてきた。新たな冷媒を用いた冷凍空調機器の性能評価や最適設計を行うためには、その冷媒の熱力学的性質を表現した数学モデル(状態方程式)が必要不可欠であり、信頼性の高い状態方程式は、高精度に測定された熱物性値(臨界定数、密度、飽和蒸気圧、比熱、音速等)に基づき開発される。

これらのプロジェクトにおいて九大は、HFCに替わる新しい低GWP冷媒(HFO-1123、HCFO-1224yd(Z))の実用化を目指した冷凍空調機器の性能評価や、最適設計において必要となる熱物性について精密な測定をし、それらに基づいた高精度な状態方程式を開発した。そして、このたび同方程式が、世界標準の熱物性データベースであるアメリカ国立標準技術研究所(NIST)のREFPROP(第10版)に登録された。

これにより、HFO-1123およびHCFO-1224yd(Z)の熱物性値のみならず、既存冷媒とこれらの冷媒との混合冷媒の熱物性値も簡便に計算できるようになり、新たな低GWP冷媒を用いた冷凍空調機器の性能評価や最適設計が行え、新冷媒の実用化に大きく貢献することが期待される。NEDOは、引き続き低GWP冷媒実用化の取り組みの成果を展開し、環境負荷が圧倒的に低い冷凍空調機器の早期実現に貢献していくとしている。