PTCは5月17日、同社の3D CADツール「Creo」に関する記者説明会を開催。同社で開発した新たなトポロジー最適化にまつわる機能など、最新バージョン「Creo 5.0」(2018年3月より提供中)に搭載された新機能の解説を行った。
同社はかねてより、「フィジカルとデジタルの融合」というテーマを掲げてツール開発を行っている。それに寄与するテクノロジーとして、トンプソン氏は冒頭で「IoT」、「AR/VR」、「付加製造(アディティブ・マニュファクチャリング)」を挙げた。こうした要素が他社との差別要因になっていると強調した上で、関連する「Creo 5.0」の新機能を紹介した。
金属3Dプリントを強化
近年、精度の向上により、試作だけでなく製造の手段としても注目されている3Dプリンタ。「Creo 5.0」では、金属プリントに関するナレッジを有するMaterialise(マテリアライズ)とのパートナーシップにより、「Creo Additive Manufacturing Plus Extension for Materialise」を追加した。
これにより、同社のオンラインライブラリに接続してプリンタドライバーやプロファイルを利用でき、Creo内でメタルプリントのモデル修正などが可能になった。そのほか、同社の提供するオンライン3Dプリントサービス「i.materialise」との連携も実現した。すでにストラタシスや3Dシステムズといったメーカーとは提携しており、3Dシステムズのオンラインサービスにも対応済みとなっている。
これまで、3D CADデータを元に3Dプリントを行う場合、最適化から検証、チェックまでの工程について、それぞれ異なるソフトウェアで行っていた。今後はすべてCreoのなかで一気通貫して作業を行えるという。
トポロジー最適化の「実用」を推進
任意の3Dモデルが取り得る形状を、荷重などの条件定義を元にソフト側で自動的に生成する「トポロジー最適化」の導入も大きなトピックだ。近年、3D CADベンダーから新機能として発表されることも増えた「トポロジー最適化」だが、これまで最適化形状をそのまま製品に使うことは難しく、生成された形状を参考に、新たにモデリングを行うのがほとんどだった。
今回実装されたトポロジー最適化は、既存の最適化形状と同様のポリゴンサーフェスではなく、表面が平滑化されたパラメトリックジオメトリに変換した上で出力でき、そのままデザインに追加可能という。トポロジー最適化機能自体は他社からの提供を受けているが、サーフェスの平滑化はPTCが3年かけて開発したもの。トンプソン氏は、「この平滑化技術は、他社との差別化に寄与すると考えている」と語った。
AR(拡張現実)
AR機能は「Creo 4.0」の段階から搭載されていたが、「Creo 5.0」向けに開発された機能が先んじて公開されていたという経緯が語られた。
これまでARマーカーとして「シングマーク」を都度出力していたが、アップデートによりマーカーなしでのAR活用が可能になった。これは基本機能に含まれており、既存ユーザーはアップデート対応のみで利用できる。また、2018年4月には、新たに「Creo AR Design Share」をリリース。同ツールでは、AR機能の閲覧権限を対象データごとにコントロールできるということで、こちらは有償オプションとなっている。
金型加工のためのシンプルなパス
金属の切削加工などを行うにあたり、一回削れば用を成す「金型そのもの」などに向けた「金型加工拡張機能」が搭載された。パスはフィーチャーではなくジオメトリに付加されており、シンプルな設定で最適なツールパスを生成できるとしている。
また、流体力解析に関して、パートナーのツールをCreoに完全統合。Creo内で操作できるため、フィーチャーの変更などにも対応可能。設計者のための比較的安価なツールで、高度な解析にも対応するアップグレード(3段階)も用意される。それらもCreo内に統合されているということだ。