シーイーシーは、工場現場におけるIoTデータの可視化サービス「Visual Factory」を開発。2018年6月から提供を開始する。
同社の強みである製造業向けの開発技術と IoTおよびAI技術を融合。人、モノ、設備といった工場現場のデータを活用し、状態や動きを独自技術で意味づけして、統合的な可視化を実現。作業分析を行うとともに、ダウンタイム削減を可能にするという。
シーイーシーは独立系のシステムインテグレータで、1968年2月の設立以来、今年で50年目の節目を迎えている。3月には中期経営計画を発表しており、そのなかで、製造領域を担当するデジタルインダストリー事業を注力分野に位置づけ、今回発表したVisual Factoryは、その中核サービスになるという。
シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループの江上太執行役員は、「Visual Factoryは、製造現場が使えるIoTを目指したものであり、設備の情報、人の情報、モノの情報を活用して、現場を可視化。製造現場のQCD向上と意思決定を支援できる」とした。
これまでの生産現場では、設備、人による作業、製品の情報を、進捗や保全といった業務目的ごとに管理していたため、工場の実態を統合的に把握するには、多くの時間やコストがかかっていた。
また、生産管理板、設備点検表、品質管理簿などの情報が点在しているものの、これらの多くがデジタル化されておらず、統合的に可視化する手段がないという課題があった。
そのほかにも、SCADAで設備停止状態を把握できるものの、復旧のためにとるべき行動が決められないという課題や、組立作業や物流作業は自動化されていないことが多く、設備IoTだけでは生産現場を把握することは困難であるという課題も生まれていた。
シーイーシー デジタルインダストリービジネスグループ マーケティング部・松井裕晃部長は、「国内工場では66.6%の企業がデータ収集を行っているが、データ活用している企業は2015年以降横ばいであり、活用面に課題がある。設備側にオプションが必要であったり、センサーの数だけ保全業務が増えるといった設備の課題や、データ収集ソフトが設備メーカーごとに分かれていたり、アプリやプラットフォームもそれぞれに分散したりといったことから、それぞれの利用に関する知識が必要だというIoTソフトの課題、利活用のための仕様検討が必要であり、活用用途によるデータ収集サイクルのキャリブレーションが必要であるという取得データの課題がある。設備、ソフトウェア、データ活用のすべてにおいて知見を持つ点が当社の強みであり、Visual Factoryは、こうした課題を解決することができる」とする。
Visual Factoryでは、品質と加工条件の相関分析や、部品ごとの品質トレーサビリティにより再発防止や要因把握を支援。設備や人の稼働状況と不良品の発生状況を統合し、ボルトネックの原因追究や改善提案をサポートするのに加えて、ライン単位の出来高や設備稼働状況、人の位置、モノの滞留状況を可視化し、遅延要因の把握を支援できる。
工場可視化ダッシュボードでは、全世界の工場の進捗を確認したり、出来高や工程進捗、停止要因一覧、設備総合効率、マン・マシンチャートなどを表示でき、勘に頼らない生産現場での迅速な意思決定を支援する。
「生産阻害要因の真因追求、計画外の事象に対する生産現場での迅速な意思決定を支援し、ものづくりのQCD(品質、コスト、納期)の向上に貢献できる。さらに生産現場の環境にあわせて、最初は設備の情報管理からはじめて、効果を見ながら、人の管理、モノの管理へと広げるなど、段階的に導入ことができる柔軟性も特徴のひとつである」(シーイーシーの江上執行役員)という。
標準構成として、自動車部品や家電、精密機器、汎用機器などの組立加工製造業をモデルにした可視化メニューを用意しているが、生産現場の特性にあわせた可視化メニューを選択したり、カスタマイズしたりすることができるほか、生産現場におけるデジタルデータの取得には、シーイーシーが提供している設備データ向けの「Facteye」や、作業データ向けの
「Samrt Logger」、動線データ向けの「RoFLOW」に加え、AIを活用して検査工程での良品、不良品判定の効率化を図る品質データ向けの「WiseImaging」など、同社のIoTおよびAI製品群を活用することができる。
今後、Visual Factoryの可視化メニューの拡充や対応センサーの拡大、他社のIoTプラットフォームへの対応を積極化し、生産現場のデジタル化や可視化を支援するという。 価格は、300万円から。まずは、約100社への導入実績を持つFacteyeを活用している企業を対象に導入を図る予定だ。Visual Factoryは、国内製造業で、2、3社で先行導入がはじまっているという。
同社では、2008年から、ものづくりソリューション「VR+R」を提唱。「VR+Rは、日本版デジタルツインを目指したものであり、Visual Factoryによって、さらに認知度を高めたい」とし、「今回のVisual Factoryによる可視化に続いて、今後3年間で、Intelligent Factoryによる最適化、Smart Factoryによる自動化および自律化に乗り出す。作業員への指示や生産の最適化、AIによる計画精度の向上、スマートデバイスへの指示といった自律化を進めていく」(シーイーシー・江上執行役員)とした。
同社では、現在、デジタルインダストリー事業で147億円の売上高を、2021年1月期には177億円へと拡大。さらに、スマートファクトリー事業では20億円の売上げ規模を、50億円へと拡大させる計画を打ち出している。