独立系ナノテク研究機関であるベルギーimecは5月23日(欧州時間)、オランダのMicronit Microtechnologiesと共同で薬剤開発のための新たな「Organ-on-Chip(臓器チップ)」プラットフォームを開発したと発表した。

Micronitとimecが共同で開発した人間の生理学的な環境を模倣した環境下で細胞を培養することができるマイクロ流体ウェルプレートとimec独自の高密度マルチ電極アレイ・チップを融合させた成果であるとしている。

製剤開発プロセスにおいて、並行して複数のテストを実行できるうえに、今までよりもはるかに多数の高品質で高分解能のデータを提供することができるとのことで、両社はこの技術が製薬業界に変革をもたらすことを期待するとしている。

新薬開発には10年ほどの時間と数十億ドルの費用がかかるといわれており、その原因の1つに薬物スクリーニング分析のための既存の方法の不十分さがあるとされている。従来のスクリーニング分析では、試料の空間分解能が不十分であるため、細胞培養中の個々の細胞をスクリーニングすることができなかったが、imecでは16のウェルに合計1万6384の電極を配置し、生物学的なマルチパラメータ分析を可能にしたとするほか、個々のウェルには1024個の電極が配置されており、このウェルを追加することで、実験のスループットをさらに上げることができるともしている。

  • マイクロ流体ウェルプレート

    Organ-on-chip(臓器チップ)と呼ばれるマイクロ流体ウェルプレート (出所:imec)

なお、imecで同プロジェクトリーダを務めるVeerrle Reumers氏は、「例えば、心臓の細胞は、培養することにより、より心臓に近い試料に成長するが、Heart-on-Chip(心臓チップ)形成過程での新薬の生物学的な影響をマイクロ流体ウェルプレートを用いることで、高空間分解能で電気的に観察することが可能になる。同プラットフォームが、動物を使うことなく本物の心臓を模倣できるようにすることで、新たな新薬スクリーニングの道筋を切り開く第一歩になることを期待したい。今後、心臓以外の臓器にも用途を広げていければと思っている」と抱負を述べており、さまざまな臓器への適用を目指していくとしている。

  • 培養中の心臓細胞の蛍光顕微鏡写真

    培養中の心臓細胞の蛍光顕微鏡写真(左)およびマイクロ流体ウェルプレートによる電気的信号としての記録(右) (出所:imec)