大日本印刷(DNP)とJTBは5月21日、総務省の「情報信託機能の社会実装に向けた調査研究」に参加し、2017年12月から2018年2月において「京都まちぐるみコンシェルジュサービス実証」を実施したと発表した。
同調査では、モニター(ハイブリッド型総合書店である「honto」会員の、20代から50代の情報提供者)が自らの意思で自分のデータを管理する「パーソナルデータストア(PDS)」と情報提供者の指示や事前に指定した条件に基づいて、本人に代わり妥当性を判断して第三者にデータを提供する「情報信託機能」に関する観光分野での調査として、情報提供者へのアンケートおよび有識者やサービス事業者へのヒアリングを実施。
個人情報の預託に関する受容性や課題、情報信託機能への満足度評価、サービスの使いやすさ、提供を受けた個人情報を利用する事業者間の取引上の課題などについて検証した。これにより、観光分野でパーソナルデータを安全・安心な環境下で高度に流通・利活用する際の方策や課題が把握できたという。
過去の行動や現在の状況にマッチしたレコメンドを受けるために、行動情報を提供することに関する許容度を見ると、情報提供者は観光分野のサービス事業者にパーソナルデータを提供し、その利活用を許容する度合いが高いことがわかったという。
例えば、自分の現状や過去の行動に合った「おすすめ観光情報」を受け取るためにパーソナルデータを提供する許容度は、日常生活時と比べ43.9%高かった。パーソナルデータを預託し、サービスを利用した人の今後の利用意向は81.8%であり、観光は高度なパーソナルデータの流通・利活用に適した分野だと両社は考えている。
一方、旅行関連情報を提供するサービス事業者は、最適な情報を提供するため旅行中の人々からのリアルタイムなパーソナルデータを求めており、今後はサービス事業者間でのパーソナルデータの連動や循環も必要になると想定している。
PDSおよび情報信託機能に対する期待と安全・安心の担保については、PDSを利用したい情報提供者の80%が、情報信託機能の利用を求めているという。また、社会実装に向けては、第三者に提供したパーソナルデータが意図しない形で流通しないよう管理する機能や、流通したパーソナルデータを追跡できるトレーサビリティ機能について、80%以上の情報提供者が重要と認識している。
サービス事業者および関係者は、パーソナルデータの提供に伴う損害やコスト負担、クレームなどの受付窓口など、各種データやサービス連携時の責任分担などを明確化する必要があり、多様な観点からの検討が問われている。
情報信託銀行および情報信託機能を利用したユースケースの利用意向を比較したところ、ポイント付与など具体的な利便性の提示により、人々の情報信託機能の利用意向が高くなることがわかったという。
例えば、匿名化した個人情報を企業が統計分析に利用する見返りにポイントを付与するサービスでは、利便性を提示しない場合と比べて47.5%高い、84.1%の人々が利用したいと回答している。
さらに、情報セキュリティやプライバシーの確保に関する説明に加え、サービスプラットフォームとしての具体的なメリットを訴求することが重要だとの認識を同社は示す。そのため、サービス事業者にとっても、データ利活用のイメージや自社メリットの理解を高めていくことが重要になっていくという。
今後、両社は観光分野における情報信託機能の利活用を推進し、地域の観光関連のステークホルダーと連携しながら、人口減少時代の新しい旅行体験の創造と観光地の課題解決を目指す。
DNPでは、情報信託機能を医療や子育てなどの分野に展開していくとともに、情報信託に関する制度設計などにも積極的に関与し、社会と生活者の安全・安心な情報流通環境を提供していく考えだ。