米航空宇宙局(NASA)が火星をヘリコプターで探査するというユニークな計画を進めている。2020年7月に火星探査機と一緒に打ち上げ予定で、成功すれば地球以外の惑星大気を初めて飛ぶヘリコプターになる。NASAが11日発表した。
NASAによると、計画は2013年8月にジェット推進研究所(JPL)が中心となって始まった。火星のヘリコプター(マーズヘリコプター)は20年7月に火星探査機「マーズ2020」の下部に取り付けられて米フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、21年2月に火星に到着する。
ヘリコプターの大きさはソフトボールほどで重さは1.8キロ弱。地表から最高数百メートル、飛行時間90秒以上の試験飛行を約1ヶ月間に5回程度行う予定だ。
NASA研究者によると、羽根は太陽電池で動くが、火星の大気は地球大気の100分の1と薄い。このためヘリコプターの羽根の回転数を、地球上の約10倍に当たる毎分約3000回転にするなどの工夫をした。また、地球上の管制官が直接操縦することはできないため、地球から電波を送り、ヘリコプターがその電波指令の内容を自分で解釈するという高度な機能を持っているという。
マーズ2020は車輪付きの探査機で、火星上での居住可能性や生命の痕跡などを調査するほか、将来の有人探査に備えたデータを幅広く収集する予定だ。
火星探査は、米国や旧ソ連を中心に1960年代から始まったが当初は打ち上げ後の爆発や通信途絶など失敗が続いた。70年代に入ると火星周回軌道からの調査が本格化した。「生命の存在の可能性」を探るという夢のある大目標を掲げて岩石成分の分析や火山活動の有無の調査など、幅広い探査が進んだ。
米国の火星探査の多くはNASAのJPLが中心となって進められた。97年7月4日に世界初の無人探査機「マーズ・パスファインダー」を軟着陸させることに成功。小型探査車「ソジャーナ」が火星地表面を精密に撮影し、地球に送信した。その後もNASAは火星周回軌道からの探査で、かつては広大な海が存在した可能性や両極の地下に大量の氷があることなどを示すデータや画像を次々と公表してきた。実現時期は流動的だが将来は有人飛行、有人探査も計画されている。
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