国内の自動車メーカー、トランスミッションメーカーら11社は5月15日、「自動車用動力伝達技術研究組合(TRAMI:Transmission Research Association for Mobility Innovation。トラミ)」を設立したと発表し、同日都内にて記者会見を実施した。
組合員は、アイシン・エィ・ダブリュ、いすゞ自動車、ジヤトコ、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、マツダ、三菱自動車工業の11社。
駆動系技術の強化目指し、基盤技術研究へ
TRAMIは、自動車のCO2排出抑制や価値の多様化に向けて、動力伝達技術の産学官連携の基礎研究による技術の進展および人材育成を通して、日本の産業力の底上げと持続的な科学技術の発展に貢献することを目的として設立された組合だ。TRAMIの理念は、以下の2つであるとする。
産学官の英知を集約し、将来にわたり有望である動力伝達技術の基盤強化を行い、世界をリードする日本の産業力の永続的な向上に貢献する
産学官の相互啓発による研究推進により、日本の動力伝達技術に関する専門技術力の向上を図り、技術者および将来にわたり産学官を推進するリーダーを育成する
具体的には、駆動効率の向上技術や、自動車の電動化への対応など、動力伝達技術の諸課題についての科学的現象の解明やモデル化、知の蓄積と共有を目的としたデータベースの作成などを行うとのこと。
なお、得られた成果は組合内の各企業における製品開発に反映させ、より高性能な技術を市場投入していく考えだ。
10年先の技術進化を見通して
TRAMIで計画している研究テーマについて、白井智也 運営委員長は「10年後の技術進化を見越した技術開発を計画している」と説明するほか、「動力伝達システムにおいて、燃費や走行性能に影響をおよぼす因子(摩擦損失や撹拌・せん断損失など)の技術の進化の方向性を定め、研究テーマを設定している。具体的には、金属摩擦のコントロール、気液混相のコントロールを実現するための技術開発を計画している。また静粛性に影響する、気泡の影響を含んだ作動油特性をコントロールする技術を手に入れるほか、(競合となる)TOPランナーを知るためのベンチマーク調査を実施するために必要な解析技術や計測技術を身に着けたい」と意気込みを語る。
人材育成×技術発展を両立
先述したように同組合は、駆動分野のすそ野の拡がり、駆動分野技術開発力の底上げを目指すとともに、将来を担う人材の育成にもアプロ―チしている。
すでに同組合においては(前身となる「動力伝達システム協働研究推進委員会」のころから)、全国9大学(九州工業大学、鳥取大学、神戸大学、同志社大学、横浜市立大学、東京理科大学、法政大学、千葉工業大学、室蘭工業大学)と共同で2年間のトライアル研究を進めてきており、今後もさらに委託研究を予定しているとのことで、さらにこのネットワークを広げていく考えだ。
さらに白井氏は、これまでのトライアル研究で得られた成果に関して、「大学研究室の活性化/モチベーションUPにつながった」とコメント。
これまで、学生は基礎研究・応用研究を中心に行うことが多かった一方で、企業は技術の実用化に向けた研究および商品開発を行うという、両者間での"距離感"が生じていたが、より実用化に近いフェーズでの研究を共同で行うことによって、産学間でのシーズとニーズの融合による技術の発展に加え、人材の育成にもつなげることができているという。
なお、TRAMIの理事長を務める前田敏明氏は今回の設立に対して、「この技術研究組合での研究を通じて国際競争力を向上させるとともに、エンジニア間の連携や人材育成の活性化に取り組んでいく。また、さらにこの取り組みの輪を広げ、日本産業の発展に寄与していきたい」などと述べている。