市場動向調査会社である台湾TrendFoeceの半導体メモリ調査部門DRAMeXchangeは5月14日、2018年第1四半期のDRAM市場は前四半期比5.4%増の230億ドルとなり、四半期ベースで過去最高を記録したと発表した。NAND価格が下落する一方でDRAM価格は上昇が続いていることを示すもので、中でも仮想通貨の採掘需要で、グラフィックスDRAMは同15%増という伸びを示したという。
DRAMeXchangeシニア調査ディレクタのAvril Wu氏によると、すでにほとんどのPCメーカーが第2四半期の契約価格交渉を終えており、4月のDRAMサプライヤから提供される主流のPC DRAMモジュールの価格は34ドルになったという。これは前四半期の平均価格から3%の上昇である。背景にはDRAMサプライヤが需要増加が見込めるサーバDRAMに注力していることが挙げられ、PC DRAMの価格は各サプライヤの生産能力が向上するであろう年末までの間は上昇傾向が続くとしている。
このDRAM価格の上昇は、そのままDRAMメーカー各社の売上高にも影響を及ぼしている。業界首位のSamsung Electronicsは、四半期ベースの売上高記録を更新した。2位のSK Hynixも同2.2%増の64億3200万ドルを記録した。ただし、モバイルDRAMに強い両社の成長率は、スマートフォン市場の低迷から、業界平均を下回る結果となった。
変わって同四半期の価格上昇を牽引したのが業界3位のMicron Technologyだ。上位2社に比べて同社の価格上昇率は高く、平均で10%を超したという。その結果、同四半期の売上高は前四半期比14.3%増の52億1300万ドルと50億ドルを突破した。
また、営業利益率は3社とも伸びを示した。Samsungは前四半期の64%から5ポイント増の69%へ、SK Hynixも、前四半期の59%から2ポイント増の61%へ、そしてMicronも前四半期の53%から5ポイント増の58%へと伸ばした。第2四半期も、価格の上昇に加え、製造コストの改善により、営業利益率はさらに高まる見通しだという。しかし、これらDRAMメーカーの収益性は、バイヤーが許容する限度を上回った値であることから、今後は、見積価格の増加が緩くなるのではないかとDRAMeXchangeは見ている。
製品戦略としては、Samsungは18nm品の出荷を全体の50~60%に維持しようとしている。同社の平澤工場2階のDRAMラインは、生産開始の準備中だが、こちらはおそらく次世代品となる16nmプロセスが採用される見通しである。SK Hynixは、現在、2017年末より生産を開始した18nmプロセスの歩留まり向上に注力しているため次世代の1X nmプロセスへの移行にはまだ時間がかかりそうである。また同社は、生産能力の増強計画を堅持しており、2018年末には中国・無錫の第2DRAM工場を完成させ、早ければ2019年の操業を計画している。そしてMicronだが、子会社のMicron Memory Taiwan(旧Rexchip)が17nmプロセスでの生産を開始したほか、もう1つの子会社Micron Technology Taiwan(旧Inotera)も、第2四半期中に20nmから17nmへの移行を開始し、年後半にかけて17nmの生産比率を徐々に拡大させていく予定だという。