富士経済は5月14日、国内のスマート農業関連市場の調査結果を公表した。これによると2025年における市場規模は、2017年比2.7倍の123億円に拡大するという。
同社は同市場について、農業用ドローン/ロボット、栽培施設内の環境制御・モニタリング用の装置・システム、生産・販売・物流管理のシステム/サービスを対象とし、同市場の2017年における規模は46億円と同社は予測。
農業用ドローン/ロボットは人手不足問題を抱える農業分野では期待が大きく、安全性やイニシャルコストの面で課題が残るものの、近年自立飛行型の発売や、規制緩和といった普及に向けた環境整備が進んでいる。一方、農業用ロボット(車両型の自動運転農機)は2017年にモニター販売が始まり、2018年には各社が製品投入を予定しており、今後の伸長が予想できるという。
環境制御装置は大規模栽培施設には必要な装置のため、政府によるICT事業への補助も追い風となっており、市場が拡大している。今後も大規模栽培施設は増加することが見込まれているほか、既設の栽培施設においても生産性の改善に向けて統合的な制御ができる高度な環境制御装置の導入が進むと推測。
環境モニタリングシステムは多様なITベンダーが市場に参入したことで、ユーザーニーズに即した製品やサービスが増加し、今後も大規模栽培施設向けを中心に市場が拡大していくと想定している。
また、これまでは大手企業によるハイエンドモデルが中心だったものの、参入企業の増加によりローエンドモデルが増加しており、ユーザー層の拡大を後押ししていると指摘。
生産・販売・物流管理システム/サービスは従来の紙媒体による記録管理からIT化による効率的な情報の管理と利用へニーズが移行しており、徐々に普及が進んでいる。現在、政府主導で農政改革を進めており、各地のJAもIT化を推進している。
さらに、企業や農業生産法人にとってITを利用した生産管理システムは一般的となっており、今後は生産管理や業務効率化ニーズの高まりとともに、市場は堅調に拡大するという。
養液栽培関連プラントの国内市場
完全人工光型植物工場(人工光型)や太陽光利用型栽培プラント(太陽光型)で構成する養液栽培関連プラント市場に着目すると、企業の参入や農家の集約による栽培施設の大規模化、農林水産省の「次世代施設園芸導入加速化支援事業」の後押しにより拡大している。
人工光型は、5000株から1万株規模の導入案件は減少しているが、1万株を超えるプラントや、大型プラントを導入する前の数百株から数千株規模の実証プラントは増加しているという。
2018年以降も1万株を超えるプラントの建設予定や検討が進んでおり、市場は拡大していくと推測している。また、実証プラントから本格プラント導入も進むことから、市場はさらに伸長すると想定している。
太陽光型には、水耕栽培プラントと固形培地栽培プラントがあるとのことで、2017年は大型の水耕栽培プラントの受注があったことにより市場が拡大したという。しかし、水耕栽培プラントに比べ、養液管理が容易で安価な固形培地栽培プラントの需要比率が高まっていることから、2018年以降市場は停滞すると予測。
さらに、固形培地栽培プラントの需要は増加している一方で、一部のプラントメーカーではプラント建設現場の管理者など、技術者が不足しているなどの理由により受注できないケースもあるという。人材不足の課題を解決することにより、今後のさらなる市場拡大が期待できると指摘している。
アグリビジネス関連市場の動向
国内アグリビジネス関連市場は、2016年は企業の参入が相次いだことや、熊本地震からの復興需要、次世代施設園芸導入加速化支援事業の後押しにより養液栽培関連プラント市場が拡大し、プラントで使用する施設園芸関連資機材市場や高度化が進むスマート農業関連市場も合わせて伸長したという。
2017年は熊本地震からの復興需要や支援事業による特需が落ち着き、ガラス/フィルムハウスの新設が減少したため施設園芸関連資機材市場が縮小した。新設が減少する一方で、企業の参入や農家の集約によって栽培施設が大規模化しており、養液栽培関連プラント市場が完全人工光型植物工場を中心に拡大した。
また、大規模栽培施設では高度な環境の制御やモニタリング需要が高く、政府もICT技術に関連した補助金事業を増加させており、スマート農業関連市場も拡大したという。
2018年はガラス/フィルムハウスの新設が農水省の「産地パワーアップ事業」などの補助事業により減少から横ばいに回復し、施設園芸関連資機材市場は拡大に転じると推測。さらに、養液栽培関連プラント市場とスマート農業関連市場は2017年に続き、拡大すると予測している。
企業の参入や農家の集約、政府の補助事業によって大規模農業が増加し、今後も市場は拡大すると予想。特に、スマート農業関連は、農業主体が農家から企業や若い世代の農家に代わり、経営管理や農業の効率化の観点からICT技術を積極的に導入していくことから、市場は大きく拡大すると予想している。