カゴメは、名古屋大学(名大)との共同研究で、トマトに含まれるリコピンは、にんにくやたまねぎ、油と一緒に加熱することで、体内に吸収されやすい構造への変化(トランス体からシス体)が促進されること、またその促進成分のひとつが、にんにくやたまねぎを調理することで生成される香り成分「ジアリルジスルフィド」であることを明らかにした。
この研究成果は、同社と名大大学院工学研究科の後藤元信教授との共同研究によるもので、3月13日〜15日に関西大学で開催された「化学工学会第83年会」において発表された。
トマトに含まれる赤い色素であるリコピンは、 活性酸素を消去する抗酸化作用などがを有することが明らかになっている。 体内の活性酸素が増えると細胞が傷つけられ、「体をサビたような状態」にしてしまう。リコピンはこの活性酸素を消し去り、生活習慣病から我々の身体を守ってくれる働きをしている。
リコピンには「トランス体」と「シス体」が存在し、さまざまな研究により「トランス体」よりも「シス体」の方が体内に吸収されやすいことが報告されている。リコピンが体内に吸収されやすくなることで、より一層の健康効果が期待できる。
これまでの研究で、生トマトに含まれるリコピンは、主に「トランス体」として存在するが、油と一緒に加熱することで「トランス体」から「シス体」に変化することがわかっている。また、その他のリコピンの体内への吸収を高める手法として、「加工・加熱」や「乳製品や油との同時摂取」が知られている。
カゴメは、名大との共同研究で、トマトに含まれるリコピンを「トランス体」から「シス体」に変化させる技術を研究してきた。この研究では、さまざまなメニューでトマトと一緒に使用されている野菜が、リコピンのシス体への構造変化に与える影響について比較した。さらに、リコピンのシス体への構造変化を促進する成分の解明にも取り組んだ。
研究グループは、野菜がリコピンのシス体への構造変化に与える影響を調べるため、トマトペーストと各種野菜とオリーブオイルを混合後、80℃のお湯で30分間加熱し、 加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した。
その結果、にんにく、またはたまねぎを混合したものは、コントロール(トマトペーストとオリーブオイルのみ)と比較して、統計学的有意にリコピンのシス体への構造変化が促進されることがわかった。
また、研究グループは、にんにくやたまねぎに含まれる特徴的な成分である「含硫化合物」が、リコピンのシス体への構造変化に影響していると考えた。リコピンと候補となる含硫化合物と油脂を混合後、電子レンジで加熱し、加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した結果、にんにくやたまねぎを調理することで生成されるジアリルジスルフィドが、最もリコピンのシス体への構造変化を促進することがわかった。
今回の研究で、トマトに含まれるリコピンは油と一緒に加熱するよりも、油に加え、 にんにくやたまねぎと一緒に加熱した方が、体内に吸収されやすい「シス体」に変化しやすくなること、また促進成分のひとつが、にんにくやたまねぎを調理することで生成される香り成分「ジアリルジスルフィド」であることが明らかになった。この結果から、にんにく・たまねぎ・油を用いたトマトメニューはおいしさだけでなく、リコピンを体内に効率良く取り入れるのに適したメニューであると考えられる。