南米原産で強い毒を持つ「ヒアリ」が国内に定着するのを防ぐために、港湾などで見つかったアリがヒアリかどうかを簡単に判別できる検査キットの試作品を国立環境研究所(環境研)の研究グループが開発し、このほど発表した。同研究所は試作品の信頼性を確認した上で希望する自治体や研究機関に提供する予定で、ヒアリの定着防止に重要な水際対策に役立つと期待されている。
検査キットの試作品を開発したのは環境研・生物・生態系環境研究センター生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長、坂本佳子研究員と環境ゲノム科学研究推進室の中嶋信美室長ら。
キットは「LAMP法」というDNA技術を活用している。「DNA合成試薬」と呼ばれる試薬にヒアリの疑いがあるアリの前身と後脚1本をすりつぶしたものとを混ぜ合わせる。一定時間保存した後、液体が白く濁るとヒアリと判定する仕組み。約130分で結果が出るという。ヒアリは体長2.5~6ミリ程度と小さいため、目視だけでは判別が難しい。分布拡大や定着を防ぐためにはいち早く存在を確認して防除することが最も重要だが、現状ではアルコール標本などを専門家に送って確認してもらっているため、結果が出るまで数日かかっていた。
ヒアリは、昨年6月に兵庫県尼崎市内でコンテナ内に侵入しているのが見つかって以来、東京や横浜、名古屋、大阪などの港湾を中心に上陸例が相次いで報告された。環境省によると、今年に入ってから4月まで見つかっていなかったが、今月9日に大阪府八尾市の民家で中国製家電製品の段ボール箱からヒアリの死骸が発見された。民家での発見はこれまでになく、水際対策の重要性が改めてクローズアップされている。ヒアリは春以降気温が上昇すると活動が活発になり、同省などが注意を呼びかけている。
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