東北大学は5月8日、仙台市内に既設の防災対応型太陽光発電システムをベースとして開発した「次世代型防災対応エネルギーマジメント」の試験運用を開始すると発表した。

現在仙台市内には、全小中学校を含む指定避難所など194か所に防災対応型太陽光発電システムが導入、運用されている。同システムは、昼は太陽光発電から電力供給を行い、災害時には避難所での電気を確保できるというものだ。

  • 防災対応型太陽光発電システムのイメージ図

    防災対応型太陽光発電システムのイメージ図 (出所:東北大Webサイト)

しかし、このシステムには2つ課題がある。まず1点目は、CO2フリー電力の未利用問題だ。避難所となっている小中学校では、土日祝日や長期休暇時には太陽光で発電した電気が余っている。これの未利用電力を活用できれば、二酸化炭素排出量の削減と電力料金の削減も期待できる。

2点目は、蓄電池の寿命問題だ。システムで使用する蓄電池は、災害による停電に備えるため常に満充電状態となっているが、この状態が続くと電池性能の劣化につながってしまう。そのため、蓄電池を適切に充放電させることにより、蓄電池の長寿命化を実現する必要があった。

東北大学は今回、これらの問題を解決し、防災性・環境性の向上を図るべく、同システムを活用した「次世代型防災対応エネルギーマジメント」の試験運用を、仙台市と共同で4月から開始した。

  • 次世代型防災対応エネルギーマネジメントのイメージ図

    次世代型防災対応エネルギーマネジメントのイメージ図 (出所:東北大Webサイト)

具体的には、太陽光発電量や電力使用量、気象情報などの各データから予測制御技術を利用し、遠隔監視による電力の見える化と最適化制御をする。これにより太陽光発電電力の有効活用、蓄電池の長寿命化、電力のピークシフトによる電力料金削減、さらに気象情報に応じた防災力の向上、CO2排出量の削減も期待できるという。

なお東北大学は、同試験において実運用における効果の検証を行うとともに、自治体や個人が持つ発電設備をまとめ、1つの発電所のように活用する「仮想発電所」への展開に関する検討も行いたいとしている。