日立製作所は5月10日、発電用エンジンのシリンダー内の圧力に関するデータ(筒内圧データ)を利用し、燃料の状態に即した点火タイミングや空気量などの指令値(燃焼制御値)の調整方法(燃焼制御方法)の学習と、学習用の筒内圧などのデータ収集を自ら繰り返す自己学習により、燃料の種別や混合状態に応じたエンジン制御を行うというAI(人工知能)技術を開発したと発表した。
新技術の利用により、発電用エンジンの燃料として、バイオ燃料(エタノール、メタンなど)や水素などを組み合わせた効率的な発電が可能になるという。
今回、同技術を搭載したエンジンシステムを試作し、トルエンやエタノール、メタン、水素を燃料として混合燃焼させた結果、エンジン出力15kWの条件で熱効率は34~41%となり、かつ安定的な燃焼の基準とされる燃焼変動率3%以下での制御が可能なことを確認した。
同技術の特徴として「筒内圧データを用いた燃焼制御方法の学習」「熱効率の向上につながる学習用データの自動収集」の2点を挙げている。
筒内圧データを用いた燃焼制御方法の学習については、燃焼状態を高精度に把握できる筒内圧データを用い、エンジンの点火タイミングや空気量などをニューラルネットワークにより学習する。
この学習結果を用いることで、燃料の種別や混合状態に応じた最適な燃焼制御値の算出が可能になるという。
熱効率の向上につながる学習用データの自動収集に関しては、筒内圧データを用いた燃焼制御方法の学習で算出した燃焼制御値の周辺で次の制御値候補を生成し、それらの候補で実際に熱効率の評価を行い、熱効率が高くなる制御値のもとで、実際にエンジンを運転しつつ学習用データを自動的に収集する。
これにより、投入した燃料のもとで、熱効率が高くなるような燃焼制御方法の学習につながるという。
今後、同技術を利用し、低炭素社会に向けた地域エネルギーシステムの早期実現を目指す考えだ。
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