ネコのふんが放出する悪臭の原因物質は硫黄を含む化合物で、その化合物がふんの主がオスかどうかを識別するフェロモンとして機能していることを、岩手大学農学部応用生物化学科の宮崎雅雄(みやざき まさお)准教授らの研究グループがこのほど明らかにした。悪臭対策につながる可能性があるという。研究成果は科学誌「ジャーナル・オブ・ケミカル・エコロジー」に掲載された。
研究グループによると、ペットブームの中でもネコの飼育数は昨年イヌを上回った。愛猫家が増える一方で、放し飼いネコや野良ネコによる悪臭苦情も増えているという。ネコはふんをすると臭いを隠すために土や砂をかける習性があるが、そのまま放置する場合もあり、これは縄張り行動と考えられていた。しかし、悪臭を放出する物質にどのような化合物が含まれているか、ネコがふんの主をどのように識別しているか、などは未解明だった。
宮崎准教授らは、悪臭の原因物質を解明するために「ガスクロマトグラフ質量分析計」と呼ばれる装置を使って悪臭を放つ揮発性の化合物組成を詳しく分析した。その結果、原因物質は「3-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール」(MMB)という硫黄含有化合物であることを突き止めた。MMBはネコに特有のアミノ酸「フェリニン」の分解物で、2006年にネコの尿の臭いの原因物質であることを既に解明していたが、今回ふんの悪臭の原因にもなっていることを明らかにした。MMBはオスの方がメスより多いことも判明したという。
研究グループはさらに、MMBを除いたふんとMMBを含むふん、それぞれの臭いをネコに嗅がせる動物実験を繰り返した。その結果、ネコがふんの臭いを嗅ぎつけた時にMMBを含むものと含まないものを識別できることが分かった。ネコはそうした嗅ぎ分けにより、ふんの臭いの主がネコか他の動物かを識別。さらに、MMBを多く含んで臭いが強ければオスのものと識別しているらしい。
今回ネコの性(オス)識別のフェロモンとして機能していることが分かったMMBは金属イオンと結合しやすい性質があり、結合すると揮発できなくなって臭いを取り除くことができる。研究グループはこうした性質を利用することでネコの悪臭対策に使える可能性があると期待している。
関連記事 |