マックス・プランク研究所などの研究チームは、ペロブスカイト材料に光を照射したときに材料中のイオン流が約100倍に増大する現象を発見したと発表した。同成果は、光を利用した新型のエネルギーデバイスなどに応用できる可能性があるという。
研究チームは今回、ペロブスカイト材料であるヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPI)に対する光照射の影響を調査。その結果、光照射によってMAPI中でヨウ素イオンの移動が起こることを確認したとする。この効果は非常に大きく、材料中のイオン流は光照射前の約100倍に増大するという。
イオン流が発生する仕組みは、次のようなものであると考えられている。
まず、光照射によって通常の太陽電池のように電子と正孔のペアが生成される。そして、正の電荷をもった正孔によって、負に帯電したヨウ素イオンが電気的に中性化される。電気的に中性なヨウ素原子はヨウ素イオンに比べて原子半径が小さくなる。このため、ヨウ素原子は、ヨウ素イオンが入ることのできない格子間の空間に収まるようになる。その結果、結晶格子中にヨウ素イオンが抜けた隙間ができ、この隙間の存在によってイオンの移動が起こるという仕組みだ。
イオンの移動は材料に構造変化をもたらし、光電変換効率を下げるなど、ぺロブスカイト太陽電池の動作上はダメージ要因となる現象であるといえる。しかし、研究チームは、この現象を利用した新型のエネルギーデバイスなどが実現できるとしている。例えば、光照射によって生じるイオン流を直接利用することによって、光を当てるだけで充電できる二次電池などが作れる可能性があるとのことだ。
研究チームは今後、MAPI以外の材料でも光照射によるイオン流の発生現象が起こるかどうか調査していくとしている。